第2話 庭に居る猫を追いかける愛犬


   2庭に居る猫を追いかける愛犬



あきらめたのかどこかへ行ったのか鳴き声はしなくなった。


だが、着替えてモモ子の散歩に行こうとドアを開けるとさっきの猫がいる。


モモ子が目ざとく見つけて猫を追いかけると猫は素早く隣の庭に消えた。


私は心の中で あーあ、これで猫は怖がって寄り付かなくなるだろうと思い、


残念に感じていた。


仕方ない。

家の中にはモモ子の他にオカメインコの桃太郎がいる。


高齢ではあるが元気である。


所詮、猫がなついたとしても飼える訳ではなかったのだ。


三十分ほどの散歩から戻るとモモ子は縁の下をしつこく覗いている。


そういうことをしたことのない犬である。


猫の臭いがするのかも・・・


私はリードを強く引っ張ってとりあえずモモ子を家の中に入れると縁の下を覗いてみた。


さっきの猫がいる。


よほど私の家が気に入ったのだろう。

おいで、おいでと声をかけると恐る恐るではあるが縁の下から出てくる。


だが、今度は警戒してか手を伸ばすと少しだけ逃げていく。


私は縁側に置いてある犬の餌を手に取り掌に乗せて猫を誘うが


警戒して少し手前で止まって近づいてこない。


傍にあった石の上に数粒置くとすーと近づいてきて


臭いを嗅ぎ一粒くわえるとさっと縁の下に隠れてしまう。


何回か繰り返すうちに手の届く範囲に来たので思い切って抱き上げると


朝のように腕の中に抱き取られたままじっとしている。


よほど人馴れした猫である。


あまり長いこと猫を抱いているとモモ子に対して浮気しているような罪悪感を


覚えるのでそこそこにして家の中にはいる。


今日は元旦である。


私にとっては久々の休日なので朝昼兼用のおせちもどきをテーブルの上に並べ


お屠蘇の代わりに冷蔵庫から濁り酒をだす。


ダラダラとテレビを見ながら正月料理を食べ濁り酒を飲みグダグダとした時間を楽しむ。


少し酔ってまどろんでいるとミャーオ、ミャーオと猫の声がする。


モモ子に気づかれないようにドアを開けて外に出ると


 呼んだのだから出てくるのは当然とばかりに猫がいる。


寒いから中に入れてくれと云わんばかりの顔である。


少し抱いて温めてやると朝と同じようにじっとしている。


   


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