第22話 合同実習!
2班合同で実際に街へと繰り出す実習。僕達第5班は、ルート先生率いる第6班、つまりカシンやヒルコ、ファロン達と一緒に実習を行うのだ。初めての実習で一緒に行くのがカシン達というのは、リアにとってもすごく心強かった。
「じゃあ、これから実際に、現場へと向かいます! 一応今日は、堕魔討伐の任務とかではないけど…… もしかしたら、途中で堕魔と戦闘になると言うことも考えられるので、気は抜かないように!」
イーナの説明の直後、第6班の担当であるルートがさらに説明を補足する。
「今日は、俺達のチームは南部地区、つまりは一部治安の悪い方面にも行くことになる。イーナも言っていたが、俺とイーナがいるとは言え、いざとなれば、皆にも対応してもらわなければならない事もあるだろう。イーナも言っていたが決して気は抜くなよ!」
フリスディカ南部地区は、商業で賑わう街であり活気の溢れる地区だ。だが一部、いわゆるスラム街とかした貧困層の街と言うのもある。フリスディカの街の中でも一番犯罪が起こりやすい地区でもあるのだ。
気合いを入れるリア達。そして、いよいよ実際に街へと出る実習が始まったのだ。
学園の中にいるときは静かであったが、王都と言うだけあり、フリスディカの街は人で賑わっていた。大通りは人で溢れており、はぐれてしまえば、再び合流すると言うだけでもおそらく一苦労。はぐれないように用心せねば。
「先生。実際、先生達の仕事って普段はどんな感じなんですか?」
イーナのすぐ隣を歩いていたソールが、イーナに向かって問いかける。
「私達の場合、基本的には依頼を受けたものに出動する形にはなるんだよ。街にはいわゆる事務所の討魔師達がいるでしょ! ちょっとした案件なら彼らが対応してくれるから、例えば、彼らが対応できない案件とかに呼ばれる様な感じかな。後は、レッドリストに乗っているような堕魔の調査とかで、たまたま他の案件に会うことはあるけど……」
イーナの話によると、零番隊の討魔師達は、事務所を抱えているような、普通の討魔師達とは少し異なる仕事となっているらしい。例えば、イーナが言っていたレッドリスト。逃亡した堕魔や危険性の高い堕魔が登録されている指名手配書であり、そう言った案件に出動するというのが主な仕事であるらしい。
「それってめちゃめちゃ危険なんじゃ…… 先生達は怖いって思う事ってないんですか?」
不安そうな様子でさらに言葉を続けたソールに、イーナが言葉を返す。
「うーん。死ぬかもって思ったことは何度もあるけど、怖いって言うのはあんまりないかなあ…… そういうときはこっちも必死だからね! それに、そんな危険な連中、放っておくというわけにも行かないでしょ? 誰かが対応しなきゃ……」
「……イーナ先生でも死ぬかもって思ったこと…… あるんですね……」
「そりゃ、何回もあるよ。でもさ、心が折れたらそれで終わりだからね! もう駄目だと思っても、最後まであがけば、以外と何とかなるもんだよ! 現に私もこうして生き延びてこれたしさ!」
「向こうだって、命がかかっているからな。それだけ必死にこっちの命を狙ってくる。そういうもんだ」
特に、普通の様子でそう口にするイーナやルート。討魔師を目指そうと決めた時点からリアもわかっていたつもりだが、いざ先生達の口から言われると、怖くなってきてしまう。なにせ、今いるのは学園の外。どこから堕魔が襲ってくるかもわからない。常に首元にカマを当てられているような、そんな感覚が急にリアを襲ってきたのだ。
「まあ、でも大丈夫だよ。皆のことは私達が命に替えても守る。だから……」
だから…… 続きの言葉を継げようとしたイーナ。だが、イーナの言葉の続きは、突如として発せられた悲鳴によって遮られたのだ。
「きゃーーーー!」
「何!?」
突然に街へと響いた甲高い声。確実に何か異常事態が起こっているであろう声に、リア達の間にも緊張が走る。いきなりこんな……
「どうするルート?」
イーナは真剣な表情でルートへと問いかけた。そして、冷静を保ったまま、ルートが答えを返す。
「俺が見てくる、イーナはここで待っててくれ」
「了解」
ルートはすぐに1人、声の方向へと向かっていった。ルートがいないこの状況、何かがあってもイーナ先生しかいない。緊張したまま、リア達は、ルートの帰りを待っていた。
それから間もなく、ルートは安堵したような様子で、ゆっくりと皆の元へ帰ってきた。
「ただのコソ泥だ。もう既に解決したみたいだし、俺達が首を突っ込む必要は無さそうだ」
「よかった!」
ひとまず、特に大事には至らなそうで、安心したイーナやリア達。ただやはり、ここは街中。何が起こるかわからないし、決して油断は出来ない。その事実を改めて自覚したリア達であった。
………………………………………
同時刻。
「兄ちゃん! 兄ちゃん!」
ボロボロの衣装に身を包んだ小太りの男が意気揚々と家に入る。まるでおもちゃを与えられた子供が喜んでいるかのように、スキップしながら家の中を駆けていく男。
ドタバタと音を立てながら家を駆け回る小太りの男に向かって、ぼさぼさの長髪を揺らしながら兄と呼ばれていた男がイライラしながら言葉を返す。
「なんだ、グール? こっちは話し中で忙しいんだ、ちょっと黙ってろ。バラすぞ?」
長髪の男の前には仮面をつけた謎の人間。性別も年齢もよくわからない人間は、丁寧な言葉遣いで言葉を返す。
「あらあら、元気な弟さんですね!」
見たこともない突然の来客に驚きを見せたグールと呼ばれた小太りの男は、声を上げた。
「あれ!お客さん!? ようこそ!! あ、そんな事はどうでもいいんだ!」
「何がどうでもいいんだ? てめえ、客に失礼だろ グール、てめえバラすぞ?」
「いえいえ、いいんですよ! こちらのことは…… さて、弟さん、一体何をそんなに慌てて?」
「あのねあのね! ぼくちん、見ちゃったんだよ! ぼくちん! あの例の学園の生徒ちゃんを!」
「なるほど、ギールさん。ちょうど良いタイミングだったようですね!」
「ふん、てめえの思い通りにことは進んでいるってことかよ! くっそ面白くねえ…… だが、俺達もあいつら…… 零番隊の連中には恨みがある。良いだろう乗ってやろうじゃねえか。その分謝礼はたんまりと用意しておけよ! 約束を破ったときは…… わかってるよな?」
「ええ、ええ。話が早くて助かります。あなたたち…… 「血塗れの双子」と名高いギール・グール兄弟なら、私達の依頼もこなしてくれると信じてますよ!」
「ふん……! おいグール支度しろ! 久しぶりの狩りの時間だ!」
「あいよ兄ちゃん! 久しぶりに…… バラしちゃいますか!」
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