第21話 僕達の武器
学園生活2日目、午前の実習を終え、残すはいよいよ楽しみにしていた実習である。今日からは、基本的にはそれぞれの班のトレーニングルームに集合となるということで、リアは昼食を一気に掻き込み、気合いを入れて早々とトレーニングルームへと向かった。
――皆が来る前に、筋トレでもしておこう! 頑張って…… 強くならないと!
そう意気揚々とトレーニングルームの扉を開けると、そこには、なにやら、もぞもぞと端の方で作業をしている様子のイーナの姿があった。一体何をしているのかと声をかけたリア。
「先生! 何をやっているんですか?」
リアには気付いていなかったのか、びくりと一瞬反応したイーナ。リアの声にイーナが振り返る。
「ああ、リア! ずいぶんと早いね! ちょっと、午後の実習の準備をしてて……」
準備? 一体どんな実習になるのだろうか? イーナの背後には、布で隠された何かがおいてあり、おそらくはアレを実習で使うと言うことになるのだろう。
そして、イーナは何事もなかったかのように、リアの方へと近づいてきて声をかけた。
「それにしても、こんな早くから来るなんて…… 気合いが入っているね! リア!」
「そりゃあもう! 僕も早く先生に追いつきたいですから!」
「……ふふ」
そして、それから間もなく、ソールやルウもトレーニングルームへと集まり、いよいよ午後の実習の時間が始まった。
「先生! 今日の実習はなんですか?」
「しばらくは、戦闘訓練だよ。何せすぐに実際の現場での仕事が始まる。それまでに、最低限は堕魔と渡り合える力を身につけないとね!」
イーナの言葉通り、今週末から早速実際に先生に同行しての任務が始まる。危険を伴うものにはなるため、最初は二班合同でのものにはなるが、いずれはそれぞれの班が独立した小隊として動くことになるのだ。
「こないだ皆の力を見せてもらったけど、皆想像以上だった。マナのコントロールもよくできているし、連携も初めてにしては取れていた。ただ…… まだそれぞれ課題も沢山ある」
真剣な表情へと変わったイーナ。リアもソールもルウも、イーナの目をじっと見ながら黙って話を聞いていた。
「まずは、リア!」
「っ!? はい!」
「リアの強みは、近接戦闘が出来るところ。それに男の子だから、やっぱりフィジカルも強い。でも、魔力のコントロールについてはもっと上達できる。そこをもっと鍛えていった方がいいかな!」
「はい!」
気合いを入れて言葉を返したリアにイーナは笑顔で返す。そして、次にイーナが視線を向けたのはソールとルウ。
「ソールとルウ。2人ともマナのコントロールは上手に出来てた! それに技の威力も申し分はない。課題は2人とも一緒。近接戦闘だよ」
「近接戦闘……」
不安そうな声で呟いたのはルウ。ソールもどこか不安そうな様子でイーナの話を聞いていた。そして、2人に向かってイーナが言葉を続ける。
「魔法が上手に使えても、いつでも自分の得意な間合いで戦闘できるとは限らない。私も経験があるからわかるんだけど、特にこっちが小柄な女性だと思うと、近接戦に持ち込もうとする堕魔も多い。こないだのリアみたいにね! そこでだ!」
真剣な表情から、一転、いつも通りの柔らかな表情へと戻ったイーナは3人に向けて声をかけた。
「今日の実習の前に、皆に配るモノがあります! 皆のために武器を用意しました!」
「武器!?」
思いもしなかったイーナからのサプライズに、思わずテンションが上がった3人。そして、イーナは先ほど準備をしていた謎の物体の方へと向かった。上にかかっていた布を取り払ったイーナ。そこにはまだ新品の、綺麗な剣が3本、そして、身につける用の鞘が用意してあったのだ。
初めての自分用の武器に興奮を隠しきれなかった3人はずっとそわそわしていた。なにせ、武器なんて今まで扱ったことがないのだから。
「じゃあ、それぞれ渡すからね!」
イーナから手渡された剣は、見た目からは想像できないほど軽く、これならば振り回して戦うというのもそう難しくはなさそうだ。同じく、ソールやルウも、試しに軽く振ってみてはいるが、特に動きに支障があるような様子も見られない。
「特に、ソールやルウは、どうしても体力って言う面では、男の子には劣っちゃうし、こういった武器って言うのがすごく大事になると思うんだ! それぞれの相棒になると思うから大切に使ってね!」
「はい!」
3人の返事が揃う。目を輝かせながら返事をした3人の様子に笑みを浮かべたイーナは、さらに言葉を続ける。
「じゃあ今日の実習は武器を使う、近接戦闘訓練だよ! とは言ってもいきなり真剣は危ないから…… まずは木刀を使った修行からね!」
それから、リア達の本格的な学園での生活の日々が始まった。午前中は、講堂での授業、午後は戦闘訓練の日々。ひたすらに修行を重ね、気が付けば夜遅くになっており、部屋に帰って寝てはまた修行の日々が続いたのだ。
そして……
いよいよ、実際に現場…… 街へと繰り出す日がやってきたのだ。
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