第128話 ラークシャー攻防戦④(クラリスVSヘレン①)

闇の天使になったヘレンは持っていた槍でクラリスに攻撃を仕掛けて行く。

クラリスは大剣で槍を躱して行った。


『なかなかやりますね、クラリス』


「お前こそ、槍さばきは見事だよ」


『そろそろ、少しだけ本気になりますわ』


「ああ」

ヘレンは槍の速度を上げてクラリスに襲い掛かった。

明菜達はその速度を見て驚いていた。


「ねえ。明日香、ヘレンの槍の速度早くない?」


「そうだね。早いけどね.....でもクラリスの剣さばきも中々なもんだよ?」


「あいつ、待っているのか?」


「どういう事?」


「ヘレンの槍の速度が落ちる時を狙っているかも知れない」


「一撃必殺?」


「まあ、見てみるか」


今クラリスはヘレンの槍を大剣で受けるだけになっていた。


『どうしました?』


「貴方の槍が遅いので欠伸が出て来たのです。もっと早くならないのか?」


『まあ。そう言う事ですね。なら本気で行きますわ』

ヘレンは更に槍の速度を上げて行く。

それは一瞬で20本の槍がクラリスに向けて突いているようだった。

クラリスは大剣で振り回すより、最低限の動きでヘレンの槍をさばいている。

ヘレンの槍の速度は段々と上げて行ってついには一瞬で50本の槍が同時にクラリスに向けて突いているようになったいた。

そして、クラリスも大剣でさばききれなくなっていて、服はボロボロになり始めた。

明菜はグレンにこのままだとヤバイと言うでのであった。


「貴方。このままではクラリスはやられるよ」


「大丈夫だ」


「なんで、そんな風に言えるの?」


「なあ、明菜? クラリスの職業は知っているか?」


「確か、重戦士だったわね?」


「ああ。主に盾で受けて一瞬の隙をついて攻撃するのが重戦士の攻撃だが、今クラリスは大剣で盾と同じ様にヘレンの攻撃を受けている」


「だったら、その大剣での攻撃が出来ないから、ヤバイのよ」


「違う。よく見ろクラリスが大剣を持っている手を」


「え?」

明菜はクラリスの手を見ると


「左手だけで大剣を持っている」


「そうだ。あの大剣は「盾」として使っている。ヘレンはその事に気付いていない。

ヘレンは恐らく槍が一瞬の隙が出る事を知ってワザと速度を上げているはずだ」


「だったら、ヘレンはどうするつもりなの?」


「そろそろ、お互いの化かし合いが切れる頃だ」

グレンがそう答えるとヘレンの槍での攻撃が一瞬隙が出来た。

それを見たクラリスは大剣をヘレンに振りかぶった!

ヘレンはニコニコしながら槍でクラリスの剣を受け止め、素早く逆手でクラリスに向って投げ付けた。

それは5本の小さな短剣であった。

クラリスは右手で短剣を防ごうとしたが.....5本の短剣はクラリスの右手に刺さってしまった。


「うう」

クラリスはその場で膝をついてしまった。

ヘレンはクラリスが膝をついた隙をみて持っていた槍をクラリスに投げ付けた。

クラリスは咄嗟に大剣で槍を倒すと、眼の前にヘレンが詰めて来た。


『かかった。これで終わりです。クラリス』

ヘレンは両手に持った2本の片手剣でクラリスの首を斬ろうとした。

それをクラリスは見逃さなかった。

クラリス左手には大剣ではなく棒なような物に変わりヘレンの腰に振り回したのだ。


『なんだと....ぐは』

クラリスの腰からの攻撃にヘレンはモロに当たってしまい、地面に倒れてしまった。


「ふう」

クラリスは右手に刺さっていた短剣を抜き取った。

クラリスの右手には短剣が刺さった傷跡が全くなかったのである。

それを見ていた明菜達はただ茫然としていた。


「一体どうなっているの?」


「クラリスの右手にはキズが全くない」


「ねえ。貴方、教えてくれない?」


「いいぞ。お前達に聞くけど、クラリスがどちらの手で盾を持っていたのか知っているか?」


「確か....右手だったと思う。」


「そして、クラリスの左手は?」


「何も持っていなかった。だって重戦士は基本盾での防御オンリーだと冒険者ギルドで聞いた事があるわ。だからクラリスの利き手は右で盾を持っているでしょう?」


「あのなあ。普通、盾は利き手では装備しないのだよ?」


「そうなの?」


「ああ。お前達とヘレンはクラリスが右手が利き手思っていたが、あいつの利き手はだ。あいつの本当の武器は.......槍だ」


『ク....クラリ.....ス! お前えええええ!』


「やっぱりな。ヘレンは知らなかったのか? 私が左利きなのだ。そして、私の本当の武器はこれだ」

クラリスが持っていた棒が変化をして行き....ある武器に変化をして行った。

それは槍だが両端に刃がついた槍であった。

それを見た明日香が思い出したのである.....そう、その武器は、


「あれって....まさか.....?」


「そうだ。明日香。あれは薙刀に近い両刃の槍だ。あれが本来の重戦士だ」


「久々にこれを使うとは思わなかった。ヘレン、これで私は本来の姿で相手にするぞ?」


『何故! お前の右手にはキズがついていないのだ!』


「それはな、こういう事だ」

クラリスが右手を見せると.....右手には透明な盾が出て来た。


『これは....透明の盾?』


「そうだ。この盾は旦那様が作った物で大きさを伸縮自在で変える事が出来る。それと色も変化出来る盾である。お前の槍攻撃の時は小さくしていてね、お前の本来の職業.....暗殺者が使う短剣をいつ使うのか待っていたのだよ? それがさっきのお前の攻撃だ。そして、お前の癖も知っているからな? だって、お前といつも模擬戦しているからな!」


『なるほどね...。それじゃあ、私も本当の姿になるとするか....ぐはああああああ!』

ヘレンはしゃがみ込んで闇のオーラを全開にして行く。

ヘレンの姿が禍々しくなって来て、本当の姿に変化した。

その姿は顔が黒豹で両手の爪が大きくなって、足はカモシカのような黒い足に変化をして行った。


『これが私の姿。私の本当の名前は.....魔王ダルタオスの側近メルダー。行くぞエレナの使徒クラリス!』


「私の名は重戦士クラリス=レイノルズ! 行くぞメルダー!」


クラリスとヘレン事、メルダーとの第二幕が始まった。






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