第65話 商業都市ベルシア④

ハインツ宅での「赤い風」の襲撃が終わって、正樹と明菜と明日香は『白猫亭』に着いたのであった。

中に入って女将に聞きリリとみどりとクラリスがいる部屋の前に来ると部屋の中から楽しい話をしていたのであった......いわゆるガールズ・トークであった。


「リリさんの好きな男性のタイプは?」


「優柔不断ではない人よ。」


「旦那様...ダメみたい。」


「正樹君では無理だね。」


そこに明菜と明日香が部屋に入って来たのを見て


「え~。クラリスとみどり。私も混ぜっていい?」


「明日香.....もう....良いわよ。明菜さんもどうです?」


「あんた達....って何で私も入れないのよ!」


(明菜....。ツッコミは此処じゃないだろう?)


「リリさん。『赤い風』の件は終わりました」


正樹は領主宅での『赤い風』の件をリリ達に説明するとリリは泣いていた。


「リリさん。いや。聖女「リリアンヌ」さん。質問に答えてくれますか?」


「....はい。」


「どうして逃げる様になったのですか?」


「私の父はレオバード連邦の副議長ロクサーヌ=ユグドラシルと言います。実は、亜人派で議長であるヘイグ=ワーグナーが『ある人物』と手を組んでこの国を『ある人物』の支配にする計画を父は聞いて、ワーグナー議長と交渉していました。交渉は難航して、その打開策として私を捕まえようとワーグナー議長は考えた見たいです。そこで父は兄シルベールを私の護衛として首都からベルシアに逃げました。途中、『赤い風』の襲撃にあって兄は私を逃がしたのです。その後、合流先で兄と再会しましたが、何故か兄の行動がおかしかったのです.....兄は既に死んでいたのですね。」


「はい。シルベールさんに成り代わった『赤い風』の隊長ジルバが吐きました。」


「そうでしたか.....。」

リリはシルベールが既に殺されたのを聞いて眼に涙を流しながら泣くのを我慢していたのであった。


「リリさん。此れからどうするつもりですか?」


「獣国に戻ろうかと思います。実は亜人「勇者」様パーティは今首都に戻ってきていると聞きまして。あの方は父と同じ考えを持っていた方なので助けを求めようと思っています。」


「その勇者様は何処に?」


「はい。勇者様から手紙が来まして、「いつもの場所」で落ち合おうと書かれていましたので、其処に行こうかと思います。」


「その場所は?」


「「精霊の丘」と言いましてエルフの聖域になる場所です。首都レオバードからだと南にある『メルヘンの森』の最奥にあります。其処はエルフの結界があるので普通の人では先ず入れないのです。」


「何故。亜人勇者が其処に入れるのだ?」


「実は...私が勇者様に昔プレゼントしたネックレスがありまして、そのネックレスを持っていると結界の中に入れるのです。恐らくそこに勇者様はいるかと思います。」


リリアンヌの内容を聞いて正樹は不安を感じているのであった。


(この手紙、何かあるみたいだな...。情報がないから行くしかないよな?)

明菜はハインツに尋ねるのであった。


「ハインツさん。船を出す事は出来るのですか?」


「今は外出禁止令を発令していてね。約一か月は船を出せないのだよ? 理由は獣国がこのベルシアを襲撃する噂が出ていてその警戒の為、発令しているのですよ。」


「それでは....船は出せないと?」


「そうなります。」

ハインツは残念そうに答えるのであった。


「リリさん。もう少し教えてくれないか?」


「はい。」


「「メルヘンの森」って海側に近いかな?」


「そうですね....。海側に近いと言いますが....大きな岩に囲まれている森なので....ああ。あの森は首都から南端にあるので崖でありますが海に近いです。」


明日香が正樹に提案をするのであった。

「その森って上空から行けるかも? 正樹のあのロボなら行けるのじゃないの?」


「リリさん。上空から行けそう?」


「無理だと思います。あの森の上空にも結界が張っていて上空からでも侵入出来ないようにしています。理由はドラゴンの襲撃や魔族の襲撃に備えているからです。」


「森での入り口は何処にあるのですか?」


「マサキさん。森への入り口は一か所のみです。場所は首都から南にあるエルフの集落から入れますが....入り口にはエルフの兵士がいまして、父の許可が必要なのです。」

そこでハインツが正樹に話をするのであった。


「実は、そのワーグナーが反旗をして兵を集めている見たいだ。しかも、黒幕の援助が出ている見たいだ。ロクサーヌ殿は首都に居て動けない状況であると、冒険者ギルドから依頼されている調査員からの情報だ。」


「その黒幕とは誰の事か知っていますか?」


「今の所は確定していないが.....。私の想像だと武装国家「ガイアス」だと思う。」


「やっぱりな....。そうなると、首都に入るのは森に入るしかないかあ。」


「そうなるとやっぱり、船が必要になるけど....今は封鎖中だし。正樹君。どうする?」

みどりは正樹に声をかける。

正樹達は色々を策を出し合っていたのであったが、結論まで行かなかった。

そこでリリが思い当たる事を言い出したのであった。


「マサキさん。実は....もう一か所...あるかも知れません...だけど問題が....。」


「リリさん。もう一か所って何処? それと問題ってなにかな?」


「もう一か所の入れる場所は崖の下に大きな洞穴があるのですが....。問題はその洞穴の場所が....海底にあるのです。その最奥に大きな場所があってそこから上に上がると迷宮になっているそうなのです。これはエルフ族の言い伝えなので確かではないのですが....。後その最奥にはクラーケンが数体いると言われていますので...多分無理かと思います。」


リリが悲しそうに説明していた時、正樹はある事にひらめいたのであった。


(そう言えば俺が面白がって作った『あれ』があったはずだ。『あれ』は水陸両用なので行けるはずだ。)


「貴方?」


「正樹君?」


「旦那様?」


「正樹?」

嫁達が正樹の顔を見ると正樹は大笑いをしていたのであった。


「あはっはは。これなら行けるわ。」


それを見た明菜は、

「あのう...また何かを作ったの? このオタク!」


「そうだ。忘れてた。明日「あれ」を使うので今日は此処で寝よう。ハインツさんはこの事を絶対に内緒にして下さいね。」


「分かった。マサキ殿。「白猫亭」の警備は任せて下さい。」


「ありがとうございます。みんな。夕食と風呂入ったら明日の為に速攻で寝るぞ。明日は朝一番に此処を出るからな?」


明日は正樹の「あれ」を使った作戦で行く為に今日は全員「白猫亭」に泊るのであった。




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