第22話

彼はまだあそこにいるのだろうか?!そして、彼は結婚したのだろうか?そして、彼は幸せなのだろうか?           彼は本当はお洒落な人間だった。高校生の私には余り良く分からなかったが、彼はブランドの物を着ていた。           彼は、今もそうかもしれないが、当時は警察内の飲み会には行かずに、いつも真っ直ぐに帰っていた。              これはあの元刑事のオジサンが、仲間の三人の爺さん達ヘ話していたのが聞こえた。皆がそうした話を楽しそうにしている時にも、自分は一人離れて馬鹿にした顔をしていたり、ポケットから本を出して呼んでいたりしていたと。(本と言うのは文庫本を、警官の制服には深いポケットが沢山付いているみたいだから、その中に入れていたのだろうか?) だからおじさんは、彼を変わり者だと言っていた。そして今思えば、私の事も変わり者だと言っていた。何故なら、私があの当時余り口をきかなかったし、何か質問をされても うなずくだけで、かなり口数が少なかったからだ。(私は元々大人しくて、見た目以外は何も目立たない人間だった。)       だから、結局変わり者同士で合っていたんだな、と。だからもしあの遊園地デートが普通にできていたら、恐らくはそのまま付き合って、私達は結婚していたかもしれないな、とおじさんは言っていた。         もしかしたらそうかもしれない。だが、そうはならなかった…。           彼が乗って来たバスは、彼の実家があり、彼が育ったI地区のI駅から出ている物だった。                  もしかしたら、自宅から通っているのだろうか?もし仮にそうなら、彼は独身なのだろうか?それとも、結婚はしても同じエリアに住んでいるのだろうか?          会いたい。私は純粋に会いたいと思う。  彼はどうだろう?あのバスから降りて来た時に再会した後、私の事を考えたりしただろうか?                  今はこんなご時世だが、それでもできたら私は彼と遊園地へ行きたい。今度こそ、あの時は実行できなかったあのデートを実現したい。                  私は今、独身だ。子供もいない。一人で、犬達と共に生活している。犯罪歴も前科も無い、何の障害も無い只の一般市民だ。当時の様に厳しすぎて足を引っ張る、異常な母も祖母もいない。既に他界している。     一度、30代の時にオーストラリアで、しつこくストーカーをされた男と、それならと、海外に住めるからと思い切って結婚をしたが数年で離婚をした。とんでもなくマザコンで駄目なイギリス人だったが、オーストラリアの永住権は持っていた。私がアメリカの永住権を取得する前だった。                   …あの雨の日に、彼は遊園地へ行ったのだろうか?一時間待ったが、来なかったが。その前の時に車で来たが、あれは自分の、又は自分ちの車だったのだろうか?それともレンタカーだったのだろうか?もしそうなら、車もないし、私はどうせ来ないと思ったのだろうか?                  今の私は、彼が来なかった事に傷傷付いてはいない。だが、あの日雨が振らなかったら…。そう思う。            天気に寄って、そうして変わってしまう事がある…。   

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