第13話

そして彼はいきなり離れて、車の方へと歩いて行った。               エッ?!行っちゃうの?何で何も言わずに?!                 二人の巡査も驚いている。二人が彼の名前を何度も呼ぶ。A巡査が彼を追いかけた。  「おい○○、どこ行くんだよ?!」、   「おい、待てよ、○○!!」       そう言いながら彼の肩を掴んだ。     すると彼は物凄い勢いでその腕を振り払った。そしてさっきと同じに血走った目で、赤く興奮した顔でAを睨み付けた。     その様子が凄まじかったので、Aも思わず 怯み、もう何もしなかった。       そして私とBの側へと戻って来た。    私が、彼の後ろ姿を目で追っている姿を彼等二人は同情的な顔をして見た。そして又彼の名前を何度も呼び、戻る様に言った。   彼は振り向きもせず、そのまま歩いて車に 乗ると、発車させてその場を去った。   彼等が又同情的な顔をして、私の顔を見ていた。

彼等はやはり非番が何かで、昼食用のカップラーメンを買いに行っていて、その帰りだったのだ。だからあのビニール袋は、それだった。                  Bが私に聞いた。自分達と遊園地へ行かないかと。今戻り、そのラーメンを食べたら直ぐに出られるからと。           私は一瞬悩んだ。すると又Bが言った。時間はかからないし、そうしたら車で一緒に行こうと。                 私は遊園地へは凄く行きたかったが、やはり彼と二人で行きたかったし、彼とのデートをしたかった。今さっきは追いかけられていたけれど、恐かったが彼を嫌いになってはいなかった。                それに会ったばかりの二人の青年と車に乗るのも嫌だった。恐いからではない。私を救ってくれたのだから。           だが、ラーメンを食べるのを待ってまで、又、会ったばかりの知らない人間と同じ車に乗り、遊園地まで行くのが嫌だった。   気まずいからというのももうんとあった。 何せ私は男とは、子供の時に学校や、ある 時期に通っていた教会学校の先生達以外とは、普通に口をきいた経験が殆どなかったのだから。                だから何を話せば良いかは丸で分からないし、緊張する。会話もどうせ手短かに返事をして終わりだ。             だから、それで変に思われたり馬鹿にされたりするのが恐い。何せ、普通の高校生の様に屈託なく、明るく楽しくなど話せないから!そんななら必ず相手は驚き、期待はずれだからがっかりするし、嫌な顔をしたり、態度に出したりするだろう。そして私は傷付く。 もう既に相当傷付いているのだから!!  私はその短い間にそう判断した。     だが、彼は違った。彼となら話ができる! 多少は緊張をしたとしても話ができる。そして楽しい!!              見た目もスラッとしていて大人しそうで、ムダ口をきいて変な冗談を言って笑わそうだなんてしない。私はそんな事をするタイプが一番苦手だったから。           彼は理知的で、会話の仕方が私にはあっていた。質問形式で、私が答える。又は意見を言う。                  それに対しての返事や、自分の意見を言う。そういうのが普通の会話かもしれないが?、だからと言ってべらべら喋らない。    余りべらべらと話す様な、又は妙に明るい男は私は駄目だった。対処法が分からないしできない!そして、うんと疲れる!!    これはその後も、今現在でもそうだ。   だからとにかく私は断った。彼等は、特にBはがっかりした様子だったが、私はやはり彼以外の男とは行きたくなかった。     私は断り、帰ろうとしたが、上着が無い事に気付いた。その事を言うと、Aが原っぱの奥の方へと歩いて行き、持って来て渡してくれた。                  私は二人に丁寧に頭を下げて礼を言うと、落胆しながら、家のほうへと歩いて行った。 だが、話はこれだけでは無かった…。彼は 後日、私に会いに来た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る