第12話

彼はようやく立ったが、まだ二人の青年に 押さえつけられていた。彼等は警官だった。だから、彼の仲間だったのだ!!     警官Aは彼に確かこんな事を言った。離すから何かをするな、勝手にその場を離れてどこかへ行くなと。もしその場を離れたら、応援を呼ぶからと言ったと思う。       やはり彼等は何かポケベルだとかで仲間を呼ぶ物を持っていたのだろう?今は知らないが、当時はまだ携帯電話は無いのだから。 携帯は、もっと何年も後から出て来る器具なのだから。               そうして念を押してから、彼を離した。  彼は観念した様に嫌そうに少し横を向いて そこにいた。              警官Bが私に色々と質問をしだした。まず私の名前を聞いた。彼をチラッと見ると嫌そうな顔をしている。あーあ、始まったか!、といった風に。              私は下の名前だけを最初言った。すると私の苗字を聞いたから、答えた。私のフルネームを確認してから、日本名だが、日本人なのかと聞いた。外国人ではないのかと確認した。私は半分アメリカ人だと答えた。父がアメリカ人だと。だが、いないと。       Bは私の年と生年月日、住所、電話番号、 家族構成、どこの学校に通っていて何年生かを聞いた。(他にも何か聞いたかもしれないが、大体そんな感じだった。)       私は18歳だが高校2年生なので、留年しているのかと思われたくないので一生懸命に理由を説明した。母が、転校させた時に、漢字の読み書きが殆どできなかったので、無理矢理に学年を下げて入れたと。(親が馬鹿だと こんな思いをする…。間抜け母め!!)  とにかく余り聴いた事が無い様で、不思議 そうな顔をしていたので、必死に説明したのを覚えている…。            それから、今何が起きたのかと、彼を知っているのかと聞いた。(どちらの順番が先だったかはよく覚えていない。)        私は答えた。今日はデートだったので遊園地へ行ったのだが、彼が変な、ダサい上着を 着てきたので頭に来て文句を言うと、怒って遊園地に入らずに無理矢理に車に乗せられて此処で降ろされたと。          それで、悔しいからわざと酷い事を言ってやったら、怒って追っかけて来たから逃げ回っていたのだと言った。          二人は仰天した。            まずは私がデートと言った言葉に、Bが反応して数回繰り返した。Aは黙って目を見開いて私達を交互に見ていた。        そして彼は、私がデートだと言うと、しまった‼、と言う顔をしながら真横を向いた。 彼等に知られたくなかった様に。     「デート?!」、「デートって、付き合ってるの?!」、「遊園地?!」、「じゃあ、 知ってるの?!」               (そうだ!やはり先に何が起きたのかを聞いたのだ。)               私は、まだ付き合ってはいない、今日が初めてのデートだからと説明した。じゃあ彼の事を知っているのかと又聞いた。何故知ってるのかと。                私は彼が、家に来た事があると言った。それはいつ頃かと聞いたから、最近だと答えた。(確かこの遊園地デートは、私の鼻糞の様な泥棒従兄弟のヒロシの事で、母が警察を呼んでから、2週間位が経っていたと思う…。)何故行ったのかと聞いたから、あの刑事さんと来たと、刑事さんの名前を言った。   二人は顔を見合わせた。         母の物を従兄弟が盗んで質屋に売っていたから、母が怒って警察を呼んだ時に二人で来たと付け足した。             「あ〜っ、それ、あれに書いてあったやつだぁ!!」                Aが大声を出すと、Bも言った。     「アッ、あれかぁ?!」         二人がそうして驚いてるのを、彼は嫌そうに見た。                 「それで今日、遊園地ヘ行ったの?」   二人は私に、どう言う経緯で私と遊園地ヘ 行く事になったのかも詳しく聞いたので、私は答えた。自分から遊園地に行かないかと 誘ったと。               それで彼が、いついつなら良いと家まで来て言いに来てくれたと。警察署では(私が署名する為に行った理由も話したから。)、あの刑事さんが邪魔をしてその件は話せなかったからだと。                上着の事を何故遊園地で言ったのかも不思議がったので、私達は現地で待ち合わせした、そして彼は車で来たし、それを最初は知らなかったと告げた。            私のこれ等の話を聞いて、二人はとても驚いていた。そして直ぐに彼に確認した。   彼は返事をしない。何度、彼らが聞いてもだ。                  「おい、そうなのか、○○?」      Aが聞いた。              彼は黙っている。            「何で返事しないんだよ?!」     「○○、お前、何黙ってんだよ?!」   Bも怒鳴った。             「おい、○○!お前、何で返事しないんだよ?!返事しろよ?!」         Aがイライラして言った。        「そうだよ、何か言えよ?大体お前、馬鹿じゃないの?デートにそんなダサい上着なんか着て行って?!」            Bも腹立たしそうに言った。       すると彼はBをギロッと見た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る