第10話

私は走った!!彼は追い掛けて来る!!  たまに後ろを振り返って見ると、凄まじい顔で、絶対に逃さないと言った風だ。何とも恐ろしかった。              だから必死に走ったが、彼も必死だ。私も早いが彼も早い。原っぱは広いから中々出られない。周りには誰もいない!!      途中、捕まりそうになった。腕を差し出して私の腕を捕まえようとするのを何とか交わして逃げた。               又追い付かれそうになり、急いで着ていた紺と白のスタジアムジャンパーを脱ぐと、それを振り回した。             彼の顔の前で振り回す。彼は顔に当たらない様に何度も除けて、ジャンパーが当たらない様にする。               だが遂に、上手くジャンパーを掴まれてしまった!!そうして次に、ジャンパーを振り回していた私の腕を捕まえようとした!   私は急いでその手をジャンパーから離した。すると彼はジャンパーを地面に落として、又腕を伸ばして、もうジャンパーを掴んでいない私の腕を捕まえようとする!      私は慌ててサッとその腕をかわすと身体を前かがみにして地面に両手を着けて、そのまま走り出した。近すぎたから、身体の姿勢を急に低くして、捕まえ辛くして逃げた。   本当に必死だ!!そのまましばらくは手を前に付いて四足の様に走りながらチラッと振り返り、彼との距離を確認してから段々と身体を上げて両手を地面から離して元の立った状態で走った!              彼は執拗に追って来る。大変だ!!恐い!!私は恐くて泣きながら喚いていた。    「ワァー、助けて〜?!」、「誰か〜?!、助けて〜?!」、「ワァー!!ワァー!!」  私は誰かに聞こえる様に願いながら、途中から必死に叫んでいた。           それから、神様、助けて、神さま?!と心の中でも必死に神に頼んでいた。捕まったら何をされるか分からない?!本当に何をされるか?!                 そこまで凄かったし、この追いかけっこはいつまでも続いた。歩道へ出ようととしても近くに来られてそれを避ける為に走り、真っ直ぐに走る事ができずに、ぐるぐると原っぱを走り回っていた。            その時だ!私の願いが通じた!!まだ遠い歩道を二人の青年が歩いて来た。彼等が私の叫び声に気付いて、こっちを見た。     二人は私が彼に追いかけ回されて逃げまくっている姿を見ると顔を見合わせて、急いで原っぱに走って来た!原っぱに入り、直ぐに手にしていた互いのビニール袋をポンと地面に放って、一目散でこっちに走って来た!!

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