第9話
車から降りた私は涙が乾いた顔をして、呆然と車の横に立っていた。 彼は車に乗り込む為に反対側へと廻った。 だが直ぐには乗らないで、しばらくは私の顔を見ていた。どうしようか考えている様だった。 それから口を開いた。 「車に乗って。」 「エッ?」 「乗って!遊園地、行くから。」 私は直ぐに乗れば良かった。だが乗らなかった。何故なら、その言い方が命令口調だったからだ。何か偉そうで、指図をしているみたいだったからだ。 だから私は腹が立った。もっと優しく言ってくれたら直ぐに乗った。だが、私にもプライドがある! 今なら思う。余りプライドにこだわっては いけないと。だがまだ世間知らずで、物凄く純情だった。だから傷付いたし、指図されて乗りたくはなかった。 しかも恩着せがましく、遊園地へ連れて行かれるだなんて嫌だった。遊園地へは行きた かったが、そんな風にして行くのは嫌だった。 だが違ったのだ。あれは、彼が私に悪いと 思ったのだ。怒りすぎたのと、私の生まれて初めてのデートを潰したのを。 それと、自分が初めてのデートの相手なのだから、ならやはりそうでいたかったのだ。 だが彼は恋愛経験が余り無かったのではないだろうか?私はゼロだったが、彼ももしかしたら殆ど無かったのかもしれない?だからあんな言い方しかできなかったのではないだろうか? でもそんな事が分かる筈もなかった。だから私は怒って、悔しいから意地悪を言ってやろうと思った。 それで言った。 「嫌だよ。誰が乗るか?!バッカじゃないの?あんたなんかと本気で遊園地になんか行きたいと思ったの?そんな顔で、眼鏡なんかかけてて、そんなダサい男と?!だから、からかっただけだよ。なのに本気にして、本当に出て来てさ!馬鹿じゃないの?!」 そうやって思い付いた悪口を言ってやった。本当はダサいだとか変な顔だなんて丸で思っていなかった。眼鏡の事を言ったのも、女と同じで、眼鏡をかけているのを気にしたり コンプレックスに感じる男がいると言うのも聞いた事があったからだ。でもこの彼は、眼鏡がとても良く似合った! 彼の顔が驚きと怒りとで激変した。 私はそうして意地悪い事をを言うと、車から離れると足早に歩いて、原っぱから歩道へ出ようとした。 とても悲しかったし、遊園地へは行きたかった。一緒に行きたかった。だが母に似て意固地な面があった。 だからあの時はそうするしかなかった!! 何て、馬鹿だったのだろう?!黙って車に 乗り、遊園地へ行けば何でも無かったのに!! 私は少し歩きながら、後ろでハァハァと言う息遣いを聞いた。何だろう?それとなく振り返ると、彼が物凄い形相で私へと近付いて来ていた!! 彼は興奮していて顔が赤くなり、目が据わっていた。尋常では無かった。丸で野獣が獲物を見て近付いて来る様な、確かそんな風な感じに思った気がする?! 私は身に危険を感じて走った!!すると彼も走って、私を追って来たのだ!!
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