第2話

母が警察を呼んだ時は、ヒロシが又蝶額を 質屋に持って行こうとした日だった。   その日には、ヒロシの両親も家に来ていた。ヒロシの妹だけは、まだ中学生で、部活が何かで家には来ていなかった。       それで母は、ヒロシが蝶額を1つ質屋に持って行こうとするのを見つけて何とか止めて、取り返した。そして残りがしまってある大きな茶箱の中を見たら、数がうんと減っていた。殆どが無くなっていた。       ヒロシは年中うちへ、祖母に会いに来ると言う理由で来ていたから、その時に、分からない様に持ち出していたのだ。母や私がいない時や、祖母に気付かれない様にだ。    それで母は怒って大騒ぎをした。     父親は母にお金を渡すから許す様に頼んだが、息子に物凄く甘い母親て、母の姉は、母がそんな所にそんな物を入れてあるからだとか、そうした物を持っているから悪いだとかを当然の様に言った。          当の本人の泥棒野郎のヒロシも黙っているだけで謝らなかった。只まずい事になったと言う様に、ずっと黙っていた。       だから母は泣きながら、非常に怒り、警察へ電話をかけた。             それでうちへ来た刑事と巡査にヒロシは連れて行かれる事になった。         両サイドにこの警察官達が腕を絡めて、身体を密着して、連行しようとした。     ヒロシの両親は泣いたりしながら、母に懇願した。止めさせてくれと。母は、黙っていたが数歩歩いたヒロシが何とか振り返り、泣きそうな悲惨な声で母に助けてくれと数回頼んだ。                  それで、馬鹿で超お人好しな母は仕方ないからと諦めて、刑事達に止める様に言った。刑事が幾ら説得しても、猪年の母は頑固で、撤回しなかった。             それで刑事は母の事は諦めたが、そこにはまだ私がいた。(この時、祖母は外出していていなかった。)私が18歳なら私が被害届を出せるからと言い、母に私の年をしつこく聞いた。                  母は私が17歳だと嘘をついた。私は高校2年生だから17歳だと。だが、私は18歳になったばかりだった。            学年は、母が私を日本の公立の小学校に転校させる時に、母が無理矢理に校長先生に頼んで1学年下の学年に入れさせたからだ。  理由は、私がインターナショナルスクールに通っていたから、当時は漢字の読み書きが小学校の2年生程度しかできなかったからだ。だから母は、私がついていけないと思い、大丈夫だと言う校長先生や教頭先生の意見を無理矢理に拒み、1学年下の学年に入れた。 母は毒親だったから、わざと私が嫌がる事をしたのもあった。私は父親がアメリカの白人で、その父親によく似た顔だと言うので、母は私にはどうしてもわだかまりがいつでもあったから、私への態度には良い時と普通な時と、意地悪い時とがいつでも交差していたのだ。                  父親は私が赤ん坊の時からいないから私は父を写真や母宛の手紙でしか知らない。そうした男の子供だから、母にはそうしたわだかまりがあった。実際にそうした事を子供の時に言われたり、私の前で親戚に話したりした事も何度かあったのだ。          話に戻るが、それでも私が何とか自分自身で、私は本当なら高校3年生で、だから年も18歳だと刑事に知らせた。        刑事はそれで母に色々と確認して、母は仕方無く本当の事を話した。         私はそれで、この刑事と若い巡査と一緒に警察署へと行く事になった。私がその書類に署名したら、ヒロシを窃盗犯として調べられるし、母の持ち物であるあの多数の蝶額が返ってくるからだ。             それで私は警察署にパトカーに一緒に乗って行くのだが、まだ18歳の私はその沢山の細かく書かれた書類を見たら、非常に恐くなってしまった。              そして、帰りたいと言ったのだが駄目で、その部屋から出られなくなった。その巡査が、私がその会議室みたいな部屋から出ようとして椅子から立ち上がると前に来て私を隔てて、又椅子に座らせたのだ。       だから私は逃げ場が無くなり、もう耐えられなくなった。それで、泣き始めた。涙が物凄く出て中々止まらず、どうしようもなかった!!                 するとその巡査はポケットからハンカチを出して私に手渡した。「これ使って。」、と言って。                  私は驚いて見ると、「今度返してくれたら良いから。」、と言った。          「今度?!」              私は聞き返した。            「うん、そう。今度返してくれたら良いから。」                  彼はそう返事した。           私はその赤くて、チェック柄ではないが、黒い線が入ったそのハンカチを目に当てると、又しばらく泣き始めた。 

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