4 夢想

冷たい。


メルは、辺り一面浅い水の世界で目を覚ました。


暗い。


目の前には黒髪のアイサイ公国の服を着た少女が立っていた。


また同じ夢。


「どうして私の前に現れるの?」

少女は何も話さない。


夢なら早く消えて。


メルは強く願った。願っても一度も叶った事は無いにも関わらず。

少女は水の中で寝転んだままのメルの方に顔を近づけてきた。

その少女の口が微かに動く。

「同じ」

メルは少女から遠ざかろうと試みるが、体はびくとも動かなかった。


早く。動いて。


願いはやはり叶わない。

「声をあげて叫んで、手を伸ばして、無意識に光を求めて……そして絶望して。同じ。気付いている。だから求めるの?」


……何を言っているの?


少女は虚ろな瞳でじっとメルを見つめていた。

その暗く吸い込まれそうな青い宝石のような瞳にメルは目をそらす事が出来なかった。

この瞳は何でも見透かしている。何故だかそんな気分にさせるのだ。



「誰も同じにはなれない。私も……メルも」

そう言う少女はどこか悲し気な顔をしていた。

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