第178話
「やっぱ海で砂浜と言えば……コレでしょ!」
そう言って道尾は何かをこちらに投げる。
「(これは……)」
ビニール製の大きめの球体。ビーチバレー用のボールか。
「でもネットが無いから無理じゃないか?」
「それならわたくしにお任せを」
燕翔寺の合図とともに突如現れた召使いさん達が素早くネットを設置し、ついでに砂浜にコートまで描いてからそそくさと去ってしまう。
「(忍者か何かか?あの人たちは……)」
燕翔寺家の謎は深まるばかりだ。
「チーム分けどうしよっか?」
「わたくしはルールが分からないので観戦しておきます」
「オッケー。じゃあ2対2かぁ。せっかくだし男女ペアでやるー?」
「良いじゃんそれ」
「ちょ、待て、おい」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「どうしてこうなる」
僕と烏川ペア対安良川道尾ペアで試合を始めることに。
「私と一緒は不服なわけ?」
「違う、そうじゃなくて……」
烏川は微妙に距離感がおかしいところがある。男の部屋に上がり込んで飯を作ったり、挙句の果てにこの前は僕の部屋で一夜を過ごした。
しかも今回は水着だ。
「ふーん」
腕を組み、僕の顔を覗き込む。腐っても年頃の男子、無自覚にそんなことをされたらドキドキしないわけがない。
「イチャイチャしてないで、早くやるよー」
「イチャイチャはしてない!!!」
「………ま、いいけれど」
気を取り直してボールを握る。先行はこちらだ。
「桐堂」
「!?」
ボソリと名を呼ばれビクリとする。振り返るといつも通りの無表情、しかしその奥で闘志を燃やす彼女が。
「勝つわよ。何事も、やるからには全力で」
そう言って僅かに口角をあげニヤリと笑い、僕もそれに頷く。
「ああ、勝とう」
そしてサーブを放つ。ゲーム開始だ。
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