第179話


「おっし、道尾!頼むぜ!」

「ラジャー!」


 安良川によって高く打ち上げられたボールに、道尾が合わせて飛び上がる。


「よいしょぉっ!」


 そして放たれるスパイク。ボールは真っ直ぐに僕達の後方へ。


 しかし


「見えてる」


 それをみすみす見逃す烏川ではない。まるでスケートリンクを滑るかのように砂の上を高速で滑り、回り込む。


 そして、ポンッと軽く打ち上げる。


 それに合わせてネットに駆け寄りながら飛び上がる。


「…………っ!」


 ある地点だけ、スポットライトが当たったように光っている。


「(そこだっ!)」


 放ったボールは真っ直ぐにその地点へ。


「なっ!?」

「嘘!?」


 そして、2人の腕をすり抜け地面とぶつかって小さく跳ねる。


「だー!マジかー!」

「次は取るよー!」


 今度は向こうからのサーブだ。


「さぁー!行くよー!」

「……来い!」


 真っ直ぐ飛んできたサーブを高く打ち上げる。


「烏川!」

「ええ」


 今度は烏川のスパイクだ。


「ニィ……」

「あ」


 一瞬だけだが、見えてしまった。たまに見せる、烏川の悪い笑顔が。


「………」


 これから起こることに、僕はそっと合掌する。


「させるか!」


 何かを察した安良川がブロックするべく飛び上がる。それこそが烏川の思う壺。


「ふんっ!」

「っし!」


 弾き返されるポール。しかし、その先は場外。


「なんとぉー!?」


 あろうことか、烏川は安良川のブロックにわざとスパイクを放ち、コートの外に弾き出してしまった。


「さあ。次、行きましょうか」

「ひぇぇ……」



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