第173話


「紹介致します。こちらわたくしの父、燕翔寺 翼でございます」

「…………」


 安良川と道尾は目の前の超有名人に絶賛大興奮中だ。ただ静かに目の前の男性を見据えるのは僕と烏川だけ。


「もう、お父様。睨むのは失礼でございますよ」

「む。睨んでいるつもりは無いのだが」

「(いや、睨んでるって)」


 特に僕を。いや、待て、違う。


「…………」

「(烏川……?)」


「智恵、お友達に部屋の案内でもしてあげなさい」


 仕方ありませんね。と、燕翔寺は僕らを部屋の外へ誘導する。やっとこの謎の圧力から逃れられる。


 しかし


「そちらのお客様は少々お待ちください」

「ええ」


 烏川だけが呼び止められる。


「烏川……」

「心配しないで。別に大した事はないから」

「あ、ああ……」


 





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「さて、私に何の用かしら?」


 桐堂たちの背中を見送り、視線だけを向ける。


「燕さん達」


 ニヤッと笑ってみせると、その瞬間部屋中の襖が開き、武装した者達が。その顔全員に見覚えがある。先程廊下をすれ違った奴らだ。


「大人しく手を上げろ。妙な真似をしたら即、その首を切り落とす」

「はいはい」


 素早く手を上げ、ため息をつく。


「(全員召使いか)」


 本人もそばにあった日本刀を握る。


 燕翔寺 翼はハウンド開発企業のトップであり、"一流のハンターでもある"。


 前者はバカでも知ってるけれど、後者は一握りの人間しか知らない。


 ハンターの求めるハウンドを作るためには自身もハンターにならざるを得なかった、とは聞いた事がある。


 でもまあ


「私を狩るにはまだ実力が足りないかしらね」

「何?」


 上げた手を下ろす。


「妙な真似をしたら斬ると言った筈だぞ!」


 それと同時に斬りかかる召使い。その時


「全員動くな!!!!」


 目の前の男は突然、そう叫んだ。




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