第172話


「す、凄い……」


 燕翔寺の別荘を見て、思わずそんな言葉が。


「お褒め頂きありがとうございます」


 まさか、こんな立派な日本家屋がこの島に存在していたとは。


「洋館が宜しければ、奥の方に別館もありますので」


 別荘の別館……?マズい、頭がこんがらがって来た。いくらなんでも凄すぎるぞ燕翔寺家。


 そんな時、メラノさんがフラフラとした足取りで前に出る。


「あの、皆んなには悪いけど……アタシ、そろそろ……うっ」

「なっ、メラノさん!?」



 そうだった。メラノさんはヴァンプ。死にはしないとは言え日中は体力を削られる。さらにこの日差しによるダメージはかなりものだろう。


「こ、こちらへ……!」


 慌ててメラノさんを案内をする燕翔寺について行く形で別荘にお邪魔する。


「(中も広いな……)」


 待機していた召使いの方々にお辞儀されるのに対し、頭を下げながら燕翔寺達について行く。


 メラノさんを早く涼しい部屋で休ませないと。


 居間に到着すると、壮年の男性が1人、待ち構えていた。


「(まさか……)」


 その人物には見覚えがあった。いや、彼の事はこの学園都市にいる人間で知らない奴は1人もいない。


 世界最大のハウンド開発企業、飛燕グループのトップにして燕翔寺の父親。


 【燕翔寺えんしょうじ つばさ】だ。

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