第174話

 

「っ!?」


 私を中心に四方へ降り注ぐクナイ。 


「手を上げるフリをして暗器を仕込んでいたな」

「ご名答」


 本来室内でやる様な手品ではないが、広い部屋だったからこそ出来た芸当。この男はただ1人それを見切っていた。


「(流石は智恵の親鳥)」


 人間でありながらこちらの領域に辿り着き得る存在。私を止めて何が目的なのか分からないけれど、こちらも気張っていこう。


「小夜時雨、だと……?」

「ふふっ。あら、見覚えが?」


 鞘に収まったまま、私の左手に握られた刀を見て驚愕する。


「はっ、苔威が」

「動く許可を出した覚えはないぞ」


 刀を抜き、近づく召使いを男が静止する。


「………ふん、命拾いしたな」

「バカが。命拾いしたのはお前の方だ」

「え……?」


 素っ頓狂な声を上げたと同時に、召使いの刀は中程で折れ、切っ先が床に突き刺さる。


「まさか君は……」

「ふふっ」

「一応、名前を聞かせてくれないか」


 そっとスカートの裾を持ち、お辞儀する。


「自己紹介が送れました。蔵月の命により聖杯の護衛をしております。最終防衛機能【時花一族】の末席にして"混ざり物"。烏川暁海と申します」


 蔵月、そして時花の名に部屋は騒然とする。そして【烏川カラス】。かつての英雄達のオンパレード。


「飛燕の皆様。以後、お見知り置きを」





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