水面に写る常夏マーメイド

第162話


チリンーー


 夏休み。基本的にどの学校にも設けられている長期休暇。その期間中には数々のイベントもあり、学生にとって思い出づくりにも適した嬉しいもの。


 そんな夏休みがここ、武凪士学園にもあるわけで


「明日から夏休みだよ廻影くん!夏休み!」

「分かった、分かったから」


 頭を揺さぶられ、脳が揺れる。暑さも相まって、やばい。


「でも、たのしみだよね」


 メラノさんの声に揺さぶられながら頷く。なにせ高校生、この学園にきてからはじめての夏休みだ。楽しみじゃないわけがない。


「夏休み、ねぇ」

「お姉様?」


 まあ、このグループには1人だけそうでもなさそうな奴も居るが。


 伸びてきた黒髪を首もとに熱が籠らない様に一本にまとめて肩越しに前に垂らしている青い瞳の少女。僕の護衛役であり剣術、体術の先生でもあるクラスメイト、烏川。


 いつも無表情で何を楽しみに生きているのかさっぱりな彼女なのだが


「烏川は夏休みになってやりたい事とかないのか?」


 暫く顎に手をやり、考え込むと


「……特に無いわね」


 とだけ。そもそも彼女に趣味というものはあるのだろうか。


「ああ、でも」

「?」

「海には少し、行きたいわね」


 ボソリと呟いたその言葉に僕を含む他のメンバー達は目を合わせ、頷く。


「(全く、いつのまにこんな信頼関係を築いたんだか)」


「……?どうしたの、そんなシンクロ競技みたいに」

「行こう」

「は?」


 1人だけ状況が上手く飲み込めず少しだけ顰めた表情の烏川にニヤリと笑う。


「海だよ、海。みんなで行こう」





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