第160話
寮に戻り、新調したタブレット端末にUSBを挿入する。
先程兄から受け取った尋問記録だ。
音が漏れないようヘッドセットも用意する。
『で、もう一度聞くがお前達は何者だ?グランド・クロスでは無さそうだが』
画面に映ったのは対策部の尋問官と、先程の隠竜の人間態の2人だ。
『グランド・クロス?』
隠竜はその単語を聞いて鼻で笑う。
『あんななり損ない共と一緒にしないでもらえますか?旧人類さん?』
『質問に答えろ』
尋問官はその一言と共に隠竜の右手の甲をニードルで貫く。
『貴様らのような化け物に法は適用されない。言動には気をつけろ』
『っ、ぐっ……そちらこそ、私が痛み如きで口を割ると思わないでください』
兄の言った通り、暫くつまらない問答と尋問官による拷問が続く。
「(旧人類、ね)」
おおかた自分達を新たなこの星の支配者とでも言いたいのだろう。後から来た異物風情が。
『我々は所詮この星に先んじて送られた言わばただの先行部隊に過ぎない……来たる滅びを怯えながら待つがいい。くくく』
先行。本隊では無いということなのだろうが、それよりもだ。
「(来たる滅び……?)」
いよいよ大型フォリンクリが動き出すということなのだろうか。
「(いや、この口振り的に違う)」
先んじて送られた。つまりこの星に既に配置されたあの大型フォリンクリも含まれるはず。
「(まだ、何かが来るというの……?)」
映像が終わり、タブレットを閉じて窓から見える夜空を眺める。
明日何が起こるかなんて誰にも分からない。
「(今は、ただあの子達の成長を見守るしか無い)」
切り札である、彼らを。
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