第98話



 振るわれたライローをクナイと左腕の小手で受け止める。


 邪魔されて少々不機嫌みたいね。


「っ!?」


 突き飛ばす様にして後ろに飛び退き、糸を繋げたクナイを一本だけ投げつける。


 もちろん、狙いは大江山ではない。その足元に転がる"ガラクタ"だ。


「なっ!」


 繋がった糸で引き寄せたガラクタを片手でキャッチし、その場に落とす。そして


「やり方が気に入らないのよね」


 靴のブレードを展開し、踏み貫く。


 恐らくコイツが桐堂の話で聞いたジャミング装置。効果はこれを中心に一定距離の映像を映らない様に誤作動を起こさせる、と言ったところかしら。


 少なくとも一般の生徒が自由に使える様な代物ではない。もしかしたらコイツも刺客の1人なのかもしれない。


「俺を怒らせたいみたいだな、烏川」

「貴方が怒ったところで何か問題が?」

「殺してやるよ」

「あら怖い」


 直後に大江山の攻撃が来る。軌道の読み易いそれを後ろに飛び上がって回避する。しかし


 バキリ


 回避はした。しかし振り抜かれたその余波だけで私のシオンは破壊され、ボロボロな床は無数の破片を飛び散らせる。


「(大ぶりな一撃ね。けれど、鈍重じゃない)」


 空中でクルリと回転して着地する。


 ライローの嶺に。


「やるじゃねぇか元普通科」

「あっそ。私はガッカリよ」

「そうかよ」


 振り上げられるライローからまた飛び上がる。


「これなら避けられねぇだろ」


 そう言ってライローで薙ぎ払う大江山。


「(空中で回避行動が取れないと踏んだわけね)」


 確かに室内で風もなく、天井があって高度にも限界がある。


「(でも残念)」


 両手にクナイを2本持ち、投擲する。


 命中したクナイによりライローの軌道はズレ、さらに投擲した反動で身体をくねらせ、刃を躱しながら蹴り付ける。


 すかさずその先の壁に足をつけ、また跳躍。


 そしてそのまま落下しながら踵を振り下ろす。


「ぬぐっ……!」

「さぁ、さぁ、踊りましょう?」


 暫く私に夢中になってもらいましょうか。


「(桐堂の邪魔なんか考えられないくらいに、ね)」




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