第97話


 シュミレーションルームを起動させる。


 独特な起動音と共に広大な自然があたりに広がる。


「ふぅーっ、よし」


 まずは標的である駆竜を探さねば。


 烏川に教えてもらったが、この光景は実際に存在するらしい。人が居なくなるとここまで自然が豊かになるんだなと、しみじみと思う。


 奥に進むと、大きな何かが目に入る。ひび割れた白い壁。これは……


「(ビルか)」


 荒れた人工の建築物。そこにへばりつく様に生えた木々。まるで遺跡だ。


 エレミュートの濃度が濃く、フォリンクリが多数生息し人々が居住できないと判断された地域、怪粒危険区域。


 どことまでは教えてくれなかったが、今の大陸にある危険区域は大体こんな状況らしい。


 そして……


「キキャッ」


 人間が住んでいたという事は他の生物、フォリンクリ達にとっても過ごしやすいことを意味する。


 案の定今回の目標である駆竜が数体、姿を表す。


 不思議と緊張はなく、心の底にある感情は自信のみ。


 さあ、成果を見せる時だ。


「・・・まとめて来い」

「シャァッ!」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 一方その頃。


「あら、そこで何をしているのかしら?」

「………貴様」


 戦闘中の桐堂から約150m先の荒廃ビルの中で1人の青年と少女が対峙していた。


「邪魔をするつもりか?」

「そちらこそ」

「後悔するなよッ!」


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