第95話

「むむむむ……」


 最早日課となった烏川との朝の鍛錬を終え、教室に入ると何やら燕翔寺が悶々としていた。


 それも、来たばかりの僕をジローッと見つめながら。


「どしたん、智恵ちゃん」

「い、いえ。特には」

「……?」


 そして再び僕をジローッと眺める。


「何か用か?」

「いえ」


 勘違いでは無さそうだが、何なんだろうか。何といえば良いのか考えていると先に燕翔寺から口を開く。


「桐堂様」

「ん?」


 意を決したようで礼儀正しい佇まいに。


「(流石に正座までしなくても良いと思うが)」


 そんなどうでも良い事を考えてたせいか、燕翔寺の次の一言で飛び上がりそうになる。


「最近、烏川様と一緒におられますね」

「っ!?」

「おやぁ?」

「ひゃっ」


 燕翔寺の近くにいた道尾とメラノさんは各々違った反応をする。そうじゃなくて。


「な、何でそれを?」


 正直誰にもバレていないと思っていた。それに、バレていたとしても燕翔寺からその話をされるとは。


「やはりあの方は烏川様なのですね」

「あっ」


 しまった。ブラフだった。


「おやおやおやおやおや、おや」

「え、い、いつの間に!?」


 道尾が僕の肩に手を回してニヤつき、メラノさんは相変わらずワタワタしている。


「やはり、そう言うご関係なのでござますか?」

「断じて違うんだが……」


 おそらく見られたのは夕方の鍛錬では無く、2人で並走しながらランニングをしていた朝の鍛錬だろう。


 それしか思い当たることがない。


 「どうしたものか」と、ふと視線を向けた先にちょうど烏川が。


「烏川。来て早々に悪いが、ちょっと……」

「遠慮しておくわ」

「ええ……?」


 片手で僕を制し、そそくさと席に着いてしまう烏川。


「ふっふっふ、逃げられないよ廻影くん!」

「さぁ、さぁ、白状なさってくださいませ」

「おっ、なんだなんだ?」


 途中で安良川が乱入し、敵は3人に。


「勘弁してくれ……」



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