第79話


「ふぁぁ、春はなんだか眠くなるなぁ」


 最早見慣れた部屋のデスクにはやはりあの白衣の少女が。


「君もそう思わないかい?」


 頷くと「だよねだよね!」と身を乗り出す。


「つまりボクが仕事なのに寝てしまっても春のせい。そうだろう?」


 それは違うんじゃないかと言うと「裏切り者ぉ!」と喚き出す。


「まあ冗談は置いといてだよ」


 少女の顔が真剣になる。その姿に生唾を飲む。


「一難は去ったけど、そう。まだ"一難"しか解決してない」


 まるで次がある様な。


「おや、察しがいいね。その通りさ」


 ニヤリと微笑み、少女は椅子から立つ。


「彼女達は彼を狙う数多く存在する組織のうちの一つでしかない。むしろまだ優しい方かもしれないね」


 あれが、優しい?


「そうとも。あの組織は殆ど衰退してしまっていてね、強大な力を持つのも彼女のみ。彼女本人以外は特別警戒するほどのレベルはないんだよ」


 そして「だからこそ彼の力を狙った」と付け加える。


「まあ、だからと言って昔はこの組織には随分と手を焼かされていたわけだし、衰退した今でもノーマークとはいかなかったからね。今回の件で戦力を削げたのは大きい」


 一体どれだけの人間が彼を……


「わからんね。いくらボクでもこの世全てを知りつくしてるわけじゃない。でもまぁ」



「関連する良い情報をまた仕入れているよ」


 またですか。


「また、ってなんだい。いいかい?これはチョー極秘な情報なんだよ?下手したら数億の価値を持つかもしれない」


 なら情報じゃなくて数億の方をくださいよ、と言うと「だが断る」とドヤ顔で言われる。


「仲間たちの奮闘もあり、再起を果たした少年。そして着々と近づく学園祭までのリミット。目指すは優勝、そして大江山へのリベンジ。少年は剣を握り闘志を燃やす。第6章、勝利への道標」



「じゃ、ボクは寝るから。おやすみ」

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