勝利への道標

第80話


 ピピピピピピピピピー


「っ!?」


 突然の甲高い音に飛び起き、すぐさま着替えて部屋を出る。


「(っと、危なかった)」


 勿論部屋のルームキーも忘れずに。


「(急げ……)」


 足早に寮を出てある場所に向かう。


「来たわね」

「ああ」


 到着すると待ち合わせ相手はすでに来ていて、のんびりと本を読んでいた。メラノさんと一緒で烏川は紙の本を好むらしい。


「おはよう、烏川」

「ええ。おはよう」


 烏川暁海。僕のクラスメイトでありボディーガード、そして今から行う鍛錬の先生でもある少女だ。


 以前までは長い黒髪を持つ物静かな少女だったが、先日のある事件により髪は色が抜け落ち銀髪に、四肢や右目、首などには白い包帯が巻かれ、かなり痛々しい様子。


 しかし


「もう大丈夫なのか?」

「当たり前でしょ」


 ペラリと右目の眼帯をめくって見せる。傷跡は残ってしまっているが出血はもう無い。


「ま、乙女の顔を傷物にしたのは頂けないわね」

「悪かった……」

「冗談よ」


 淡々と表情ひとつ変えずにそう告げる烏川。他の人たちと比べて圧倒的に表情から感情が読み取りにくく、冗談で言っているように見えない。


 まあ、僕が烏川の顔をマジマジと直視できないって言うのもあるかもしれないが。



「早速今日から本格的な鍛錬、って事になってるけど準備はいい?」

「あ、ああ、勿論だ。何をするんだ?」


 僕は今から行う鍛錬への期待と少しの緊張を胸に不敵に笑って烏川にそう訊ねた。



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