第68話

「ぐっ、離せ……!」


 そう抵抗した次の瞬間、僕の後頭部に強い衝撃が走る。


「がっ……」

「少し寝てて」

「う、か……」


 視界が急速に暗くなる。そして僕は意識を手放した。


「ごめん」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「ふぅ」


 当身を受け、気絶した桐堂を肩に担ぐ。手加減はしたけれど、大丈夫かしら?


「(まあ、とりあえず)」


 桐堂に突き立てていた苦無を逆手に持つ。


「そろそろお暇させてもらうわ」


 いつまでもニコニコと気色悪い芝居じみた笑顔を続けるやつにそう告げる。


「させるとお思いですか?」

「それはもちろん」


 ただ潜入して先回りしただけじゃない。もちろん逃げ道だって作ってる。


 ピンッ


 突っ張った糸を苦無で切断し、この部屋にあらかじめ仕掛けていたトラップを作動させる。


「まあ、貴女には通用しないでしょうけどね?」


 天井にぶら下がる巨大なシャンデリアが落下し、奴に容赦なく降り注ぐ。


「………」


 その隙に踵を返し、駆け出す。


 これで仕留められるなんて微塵も思っていないけれど、桐堂を奴から引き剥がす。


「逃がすか」


 そうはさせまいと四方から聖職者の様な格好をした構成員が突如現れる。


 貫き手。奴らは人間が使う様な実体を持った武器を使うのを嫌う。


 たかが小娘。素手で十分と侮ったそんな甘えが命取り。


 突きを受け流し、背負い投げ。


「ぐぁばぁっ!?」


 素早くトドメを刺し、カバーに入ろうとした手前の男には両目にクナイを投擲する。


「ぐぉぉぉぉぉぉ!?」


 背後からの奇襲には一瞬の隙をついて回り込む。


「邪魔よ」

「かはっ……」


 心臓、コアを一突き。


 退路を塞ごうとする奴の部下達を一蹴し、教会から脱出する。そして同時に、ポケットから1つのリモコンを取り出す。


 退路を確保しておくついでに、ちょっとした小細工(サプライズ)も用意している。これで終わりよ。


「私からのとっておきのプレゼント。こころして受け取りなさい」



 ポチッ


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