第49話
「桐堂様」
教室に戻ると真っ先に燕翔寺が出迎える。
「いかが、でしたでしょうか」
「家の用事、だとさ」
僕は納得出来ないが、燕翔寺はそうでも無いらしく「成る程」と頷く。
「家のご用事なのであれば、仕方がありませんね」
「まあ、そうだな。取り敢えず授業の準備しよう」
「はい」
ひとまずこの話題は終わりだ。道尾は………寝ているし昼休みにでも教えれば良いか。
「お、おいお前」
「?」
授業用に学園側から貸し出されたタブレット端末や、タッチペン、教科書などを用意していると声をかけられる。
声の主は男子生徒。僕達と同じクラスの渡瀬だ。
「お、お前。燕翔寺のお嬢様とどう言う関係なんだ………!?」
「?」
若干の怒気、嫉妬の様な感情がそのなんとも言えない表情から感じられる。
「どう、と言われてもな」
もしかして燕翔寺のボディーガード的なものだろうか。それにしては燕翔寺と一緒に行動しているところを見たことがないが……。
「まあまあ、落ち着けよ」
「な、何だよ・・・!?お、俺は」
「落ち着けって、な?」
「うっ・・・」
突然現れた乱入者にタジタジになる渡瀬。そのまま僕の方を睨みつけるとそのまま自分の席に向かった。
「粘着質な男は嫌われるっての。な?桐堂」
乱入者も同じクラスの男子生徒で僕の数少ない同性の友人、安良川だ。
「ありがとう、で良いのか?」
「良いんじゃね?」
そう言って安良川は伸びをする。筋肉質、と言うわけではないが身長は僕より高くガタイが良い。
「けどまあ、桐堂って結構可愛い女子に囲まれてっから気持ちは分からん事もねーけどな!」
「やめてくれ、そんなんじゃない」
僕のその返答に益々笑顔になる安良川。マズい、コイツは道尾と同じタイプだった。
「燕翔寺ちゃんも可愛いし、道尾も結構良いと思うぜ?烏川さんも大人しいけど、アレはアレで雰囲気でてるし。あ、そういや最近話題のメラノさんとも仲良いよな!」
「お前も一旦落ち着け」
斜め後ろの席の燕翔寺がオーバーヒート起こして顔を真っ赤にしている。可愛いとかは言われ慣れていると思っていたが、そうでも無いらしい。
「で、本命は誰よ」
「だから違うって言っているだろ」
それから傘草先生が教室に入り、安良川に説教するまでその追及は止まなかった。
烏川ボディーガード不在の日は教室の中であろうと警戒を怠らない様にしようと、そう思った。
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