第36話
現れたのは中世の兵士の様な格好をした人形達。手にはオモチャのような剣や槍、メイスを持っている。そして奥の一体が目を引く。
赤いフリルのついたゴシックなドレスの人形。先ほどの人形と似ているが雰囲気が何かが違う。
「(こっちが本物か……!)」
「桐堂っ」
「………うわっ!」
飛来する人形、それとは別方向から強い衝撃により、僕は廊下に突き出される。烏川だ。
次の瞬間、僕が先ほど立っていた床は、たった数体の人形によって抉られる。あの一体一体がこんな力を持っているというのか。
「………っ」
続いて廊下に飛び出した烏川は右手の指に挟む様に3本のナイフを取り出す。
「そこよ」
そして素早く投擲し、3体の人形に命中させる。
するとドミノ倒しの様に他の人形たちも何体か一緒に吹き飛ばされる。
「今のうちよ。ほら走る」
「あ、ああっ!」
急がないと烏川のナイフを逃れた人形達が追ってくる。慌てて起き上がり、駆け出す。
「烏川っ!これも刺客なのか……!?」
「多分違うわ」
「じゃあ、一体……」
「まぁ、面倒なのは確かだけど」
前方からも来る人形を手に持ったナイフで串刺しにし、蹴り飛ばしながらそう答える。その時だった。
「………こっち」
「うおっ!?」
追手が追いつかない事に完全に油断していた。急に腕を掴まれ、そのまますぐ側の部屋に引きづり込まれる。
「くっ、烏川っ!」
咄嗟に烏川を呼ぶが少し遅かった。視界に何も映らないほどの暗闇に引きづり込まれてしまう。
「…………ふふっ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「桐堂………?」
今さっきまで後ろにいた桐堂が忽然と姿を消した。
「………チッ」
少なくとも桐堂自身の悪戯では無いのは確か。
【神隠し】。こんな芸当が出来るのは私が知っている人物の中でかなり限られる。
その一人が例の生徒、メラノ=リードリヒ。
コイツはエレミュートの扱いだけは一流。時には魔法としか言えない様な現象さえ引き起こす事もある。
「あの女……」
あの引きこもりが。大人しくしているだけならそっとしておこうと思ってたけれど、この私に嫌がらせするって言うのなら相応の責任を取って貰わう。
私を中心に囲む様に今更姿を現した人形達を見渡す。ザッと30体ってとこ。あの女にしては同時に操る人形の数が少ない気がする。
「お望み通りさっさと片付けて直々に会ってあげるわ。精々首を洗っている事だな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます