第37話

「うっ、くっ・・・」


 ゆっくりと体を起こす。いつの間にか気を失ってしまっていたらしい。


「ここは・・・・?」


 天井がある。

 暗くてよく見えないが、どうやら何処かの部屋のようだ。


「目、覚めた・・・・?」

「っ!?」


 振り返るとそこには怪しく光る赤い瞳が。


「………貴女がメラノさんですか」


 何となくそんな気がして語りかける。


「そう、なの。私がメラノ。メラノ=リードリヒ」

「………」


 パタン、と本が閉じられる音が。今時紙の本と珍しいが、今そんなこと考える余裕はない。


 徐々に暗闇に目が慣れていき、その姿が現れる。


 プラチナブロンドの頭髪、赤い瞳が見えるかどうか程に伸びた前髪に、右側の一部をまとめた赤いリボンが印象的な少女。


 小さいが背中に黒いコウモリの様な羽も見える。


「何が目的ですか」


 何処か儚げな雰囲気を持つ少女だが、あの烏川が「面倒な相手」と表現した人物。


 一切油断は出来ない。しっかりとその赤い双眸から目を離さない。烏川が間に合わなかったとしても隙があれば逃げ出せるように。


「…………」


 相手も僕から目を離さない。目は見てないようだが今怪しい挙動をすれば直ぐに気づかれそうだ。


 しばらくしてやっとメラノさんは口を開く。


「えっと、目的は特にないの………その、念の為と言うか………」

「…………はい?」


 読心術の心得は全くないが、敵意があるかないか程度なら読み取れる。が、前髪のせいで表情が上手く読み取れない。


「あ、その………逆に聞くけど………君は何で夜の校舎に………?」

「それは………」


 正直答え辛い。興味本位、それだけだからだ。


「・・・・・」

「・・・・・」


 沈黙が続く。分からない、何故この人は僕を・・・・。


ゴゴッ


「?」


 床が揺れた、その時だった。


「な、何………!?」

「うわっ!?」


 轟音と共に壁一面が文字通り吹き飛ばされる。破壊されたというより、グチュグチュと音を立てて溶けているあたり浸食されたという表現の方があっているか。


「(一体何が・・・・・・)」


 月明かりに照らされ、長髪の人影が姿を現す。


「桐堂、無事?」

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