第25話
「くっ……!」
すぐに体制を立て直すも、その鋭い爪は目前まで迫っている。
マズい。まだハウンドの扱いに慣れていないせいか、思った様な動きができない。
「(やられる……!)」
そう思った瞬間、駆竜は立ち止まり、後へ飛び退く。直後、青い爆炎が僕の前方全てを焼き尽くす。
「桐堂様っ!」
「っ!?燕翔寺か!?」
「はいっ、こちらに……!」
駆竜達は燃え盛る青い炎を警戒し、距離を取っている。その間に手招きする燕翔寺の元へ。
一旦、燕翔寺から案内された崖にできた洞穴に避難する。ちょうどいい感じに草が生え、ここでならやり過ごせそうだ。
「た、助かった………」
「ご無事で何よりです」
「ふぅ、ありがとう燕翔寺」
息を整えながら隣の燕翔寺に礼を言う。
「今の炎は燕翔寺が?」
「は、はい」
成る程、燕翔寺は甲本と同じ能力者だったのか。それもあの火力、かなり強力な能力に違いない。
「改めて礼を言わせてくれ」
「いえ……」
しかし、本人はどこか浮かない顔だ。
「何かあったのか?」
「いっ、いえ、その………」
「………?」
言い淀むが、覚悟を決めて決心したのか僕の方に向き直る。
「当たらないのでございます」
「当たらない……?」
「はい。その、微調整が効かず……命中した試しが無いのです」
いくら強力でも当たらなければ意味がない、という事か。
たしかに、先程の爆炎はかなり広範囲だったにも関わらず回避されていた。
有り余る火力とその尋常じゃない迫力が駆竜達を警戒させてしまったからだろう。
「成る程、な……」
「申し訳ございません」
「いや、謝る事は無いだろ……?現に僕は助けられたんだし」
「しかし……」
今まで特に接点がなかったのが早速裏目に出た。
どうすれば落ち込んだ燕翔寺を励ます事ができるのだろうか。
「たーじゅーげーてぇー!」
「「!?」」
そんな時だった。聞き覚えのある助けを求める悲鳴が。
「道尾か!」
「その声は……!廻影くん!それに智恵ちゃんも!」
頭を出すと全速力でこちらに向かってくる道尾。仲間が増える事は嬉しい事だが今回は素直に喜べない。何故なら……
「ぎゃぁー!?もう追いついてきたぁー!?」
余計な物まで連れてきているからだ。おまけに道尾を追いかける先頭の一体が目に入る。
他の個体には見られない為、目立つ赤い大きなトサカ。駆竜群れのボスである証拠だ。
ボスは群れのリーダー争いで勝ち残った個体。
他の個体よりも圧倒的に戦闘力で勝っている場合が多い。
しかし、道尾が背中に背負っている対フォリンクリ戦用防護シールド【コウジュン】が目に入る。
そこでいい作戦を思いついた。
「燕翔寺っ!迎え撃つぞ……!」
「ですが……」
「僕に考えがあるっ!」
「……了解でございます……!」
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