第24話


「お疲れ様です。オルカさん」


 シュミレーションルームを出ると傘草が一人、タブレット端末を手に座っていた。


「隣、邪魔するわよ」

「どうぞどうぞ」


 画面には生徒達の様子が映し出されている。気になる生徒の枠をタッチすれば大きく映し出される様だ。


「どうでしたか?初の実技授業は」

「悪くはなかったわね。ただ、この子達の力量に合ってるの?」

「そこなんですよ」


 傘草の表情が少し曇る。


「学園側、何か隠してますよ」

「でしょうね」


 何の理由もなくこんな突貫工事みたいな事をするわけが無い。かと言って、何か妙な事が起きそうなら対策部ウチの上層部が動かない訳がない。


「………妙ね」

「はい」


 何かと臆病な連中だ。ちょっとでも危険だと思ったらすぐに対処しようとする。けれど、今のところ何の音沙汰も無い。

 まだ新人の傘草はともかく、私にすらそう言った警告が来ていないのは妙だ。


「これだから嫌いなのよ。面倒事は」

「特にオルカさんは普段、専ら戦闘員ですからね」


 「(全く、遊撃出来ない遊撃班って、何なのかしら。あの狸、私を便利屋とでも思ってないでしょうね?)」


 愚痴を零しつつ再びシュミレーションルームに向かう。


「……?今日はもう終わりですよ?」

「知ってるわ」


 頭上にクエスチョンマークを浮かべる傘草。燕翔寺と違って可愛く無い。


「私が一番最初に居たら目立つでしょ」

「あっ、そうでした……元々は普通科で入学してましたもんね」


 勝手に移行したんだからそこの所しっかりして欲しい。


「(………あ、そうだ)」


「暇だし、それの映像私の部屋で見れる様にできる?」

「は、はあ……出来ますが……」

「じゃあお願い」

「了解です」


 2度目のシュミレーションルームは今度はただただ殺風景な真っ白い一室。そこにホログラムの画面が表示される。


『右下の赤い✖️をタップすれば終了しますので』

「ありがと」

『いえいえ。では』


 早速桐堂が写っている枠を開いてみる。


「…………」






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「くっ……!」


 何とか駆竜の鉤爪をロッカで防ぐ。しかし……


「ギャッ!」

「ぐっ!」


 勢いを殺せず、突き飛ばされる。


「(マズいな………)」


 使い方を知っているだけでは勝てない。じゃなければハンターと言う職業がそう簡単になるはずが無い。そんな当たり前のことを思い知らされるのだった。

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