第20話


「よし、今日は持ってきたな」

「はい」


 申請書を提出し、ハウンドを受け取る。僕が申請したハウンドはソードデバイスの【ロッカ】とガナーデバイスの【シオン】。


 ロッカはライローとは違うロングソードの様な剣状のハウンド。ライローより破壊力に欠けるものの、取り回しや安定性に優れている。

 そして、シオンはライフルの様な形状の中〜遠距離の射撃戦用のハウンドだ。


「(初めてだしな、どちらかが得意って事はないし可能性を広げてみるのも手だ)」


 実際、複数ハウンドを申請している生徒は少なくない。プロだって臨機応変に対応するためサブウェポンとして所持していたりする。


「…………用事は済んだの?」

「あ、ああ」


 何故かついて行くと言って聞かなかった烏川が後ろから覗く。バレて開き直ったのか最早僕に対して正体を隠すつもりはないらしい。


 オルカ。烏川のもう一つの顔で謎の組織、特別危険現象対策部のメンバー。


 僕はつい先日、その彼女に命を救われたわけだが……


「(そうだ)」


「烏川も狩猟科に移行しないか?」

「………私が?」


 素人目に見ても烏川、オルカの実力は本物。僕を助けてくれたあの日、プロ顔負けの動きをしていた甲本すら圧倒して見せた。


 特に刀を使った近接戦闘、白兵戦で敵う相手はこの学校に居ないだろう。


「ああ、そう言うと思って自分の方で移行しておきました」


 グッ、と親指を立てる傘草先生。

 なんだか初対面の時のイメージが崩れつつある。


「勝手に何してる」


 烏川のドスが聞いた声に「すみません」と軽く頭を下げる先生。しかし何処か悪戯小僧みたいな顔で、あまり反省していない様だ。


「貴方ねぇ……まあ良いわ。なら適当にハウンド用意しておいて」

「はっ、ですが例のモノは……」

「勿体無くて使えないわよ。と言うより、あんな極秘のものを公共の場で使う訳ないでしょうが」

「これは失礼しました」


 僕にはよく分からない会話が繰り広げられたが、少しして双方落ち着いたらしく、烏川は先生に背を向けこちらに向かって来る。


「さっさと戻るわよ」

「あ、ああ」





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「えぇっ!?それホント!?」


 教室に戻るなり道尾が叫ぶ。烏川も狩猟科に転科する事に驚きつつも歓喜している。


「道尾様……気持ちは分かりますが、どうか落ち着いてくださいませ……」


 それを燕翔寺が抑えようとするがあまり意味をなしていなかった。

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