秘めた力の片鱗

第19話


『えぇっ!?嘘っ!?』


 「信じられない」とばかりに声を上げて驚く電話の相手、私の上司であり喫茶店【蔵之月くらのづき珈琲コーヒー店】店長、紅葉さん。


「残念ながらホントよ。只者じゃない事は事前に知ってたけど、まさか初見で見破られるとは思わなかったわ」

『マジかぁー』


 顔は隠して無かったけれど、帽子には認識阻害を誘発させる特殊な加工を施している。本来なら至近距離で見つめられても問題無い程の代物だ。


 おそらく、考えられる原因は……


「目ね」


 それ以外考えられない。


『あー、確かに暁海ちゃんの目綺麗だもんね。印象に残ってたのかな?』

「そうじゃないわよ」


 この髪はまだしも、自分の目を綺麗なんて思った事無い。


 そうじゃなくて


「桐堂の方よ。片目だけ、たまに色が変わってる」

『そーなの?』


 あの時、左目だけ虹彩が金色に変わっていた。おそらく理事長が守りたがっているのはその目だ。


「で、これから私はどうしたら良いのかしら?撤収?」

『うぅーむ、どうしよっか……』


 こうなった以上、次の人間に任せた方が良さそうな気がする。それに、この学園は何だか嫌な気配がする。


『まあ、大丈夫かな?何かあったら理事長の方から連絡来るだろうし、もうちょい頑張って暁海ちゃん』

「はぁ、面倒ね」


 上司にそう言われたのなら仕方がない。引き続き桐堂廻影の護衛にあたるべく、特殊コーティングされたクナイを目の前に転がる死体から引き抜き、その場を去る。


 護衛任務があるからと言って通常の任務が無くなったわけじゃない。流石に以前よりは減らしてもらったけれど、面倒な事には変わりない。



「ホント、最悪よ」

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