第17話
着いたのは教員達が忙しなく出入りする大きな一室、職員室だった。
「失礼するわよ」
オルカと名乗るその少女はそう一言だけ言ってズカズカ奥の方へ進んでいく。
「ま、待ってくれ!」
僕も慌ててそれに着いていく。なんの迷いもない足取り。やはり不思議な人だ。
そしてある教師のデスクで立ち止まる。
「む」
若干強面の若い男性教師、傘草先生だ。
一般的に私服に見えるオルカを見て一瞬小言を言うのかと思いきや……
「お疲れ様です、オルカさん」
立ち上がってお辞儀する。一回りも二回りも小さな相手に、頭を下げている。オルカの方が上の立場、ということらしい。
「例の刺客よ。まあ、中に入ってた妙な奴が原因だと思うけど」
そう言って項垂れた甲本を先生に投げ渡す。
「ちなみにですが、その奴はどうされたのです?」
そいつはどこにいるんだと、あたりを見渡すように問う傘草先生にオルカはあっかからんと答える。
「殺したわ。生かしておく理由ないでしょ」
傘草先生の質問に「何言ってるの?」と、そして傘草先生も同じように「何言ってるんだ?」といった顔をする。
「ありますよ……!?」
「ああ、そう。それは悪かったわね」
「いえ、まあ、始末したなら始末したで良いんですけどね?」
少し弱気な雰囲気、教室で見た強気な態度が一切見当たらない。
「何か覚えてるかもしれないから慎重に調べておいて」
「はあ、了解です」
「じゃ、あとは任せたわ」
そう言って振り返り、出入口に向かう。
「送って行くわ。寮でしょう?」
「あ、ああ。ありがとう……」
そのまま職員室を後にし、校舎から出る。そういえば、傘草先生が職員室にいたと言うことは燕翔寺達はもう帰ってしまったのだろうか。
「桐堂様っ」
階段を降りたちょうどその時、もう聞き慣れた声が聞こえる。門の近くに燕翔寺が。
「(………あれ?)」
いつの間にかオルカが居ない。
「もう先に帰られたのかと思いました……」
「ああー、いやすまん。ちょっと職員室に行っててな……」
一瞬さっきまでの出来事が夢だったんじゃないかと思う。しかしひび割れた外壁や抉れたタイルがそれが現実だということを物語る。
「そういえば桐堂様、聞こえましたか?」
「何がだ?」
「何度かすごい轟音が鳴り響いていたので。方角的に本校舎の方からだったと思うのですが……」
聞こえたどころかその一部始終を見届けたわけだが、余計な事は話さない方がいいだろう。
「いや……僕は知らないが……」
燕翔寺には悪いが、誤魔化すことにした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…………桐堂廻影、ね」
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