第16話
「…………」
カチンッと刀を鞘に収め、少女は僕を見上げる。
「ちょっとそこで待ってて」
そう言って今度は地面に落ちた帽子を拾い、横たわる甲本を担ぐ。そして
「よいしょ、っと」
「わっ!?」
階段から上がってくるのかと思いきや窓に飛び乗る。ボク達一年生の階は3階だ。
「(そんな高さを、いとも簡単に………)」
「………」
蒼い宝石の様に綺麗な二つの瞳が僕を覗く。
「綺麗な目ね」
「え、あ、ありがとう……?」
「そちらこそ」みたいな気の利いたことすら言えず、顔を背ける。なんだか、むず痒い気分だ。
「目立った怪我も無し。入学早々襲われて災難だったわね」
「君は、一体……」
下の化け物は完全に死亡したらしく、残骸も徐々に消えつつある。助けられた訳だが、まだ安心はできない。
命の恩人ではあるが、彼女が何者なのか僕はまだ知らない。
「特別危険現象対策部本部所属、【
「対策部……!?」
聞いた事がある。まだフォリンクリが今程多くなかった時、ハンターという職業が生まれる前はこの対策部が人々の日常の影で密かに討伐していたと。
噂によると、危険な能力者などの始末も任されているとか。
「(ほとんど都市伝説みたいな扱いだが……)」
対策部はれっきとした政府の組織だ。代表者の【
「そんな対策部の人が、僕に何の用なんだ…?」
しかし、やはりまだその実態は謎に包まれている。あまり信用は出来ない。
「ある人から依頼されてね。貴方の護衛をさせてもらうことになったわ」
「護衛……?」
僕は別に特別な家の出身ではない。むしろ燕翔寺の方が護衛をつけていそうだ。
「何故僕を……」
「悪いけど、それは言えない。でも、命を狙われているのは今日の事で分かった筈よ」
「それは……」
実際目の前の彼女、オルカが居なかったら今頃僕は死んでいた。
「その、ひとつだけ聞かせてくれないか?」
「……何かしら?」
「君は、その……僕を守ってくれる、味方って事で良いのか?」
「そう言った筈よ」
「そ、そうか……」
まだ完全に信用した訳じゃないが、甲本の様な殺気は彼女から感じられない。ひとまず、警戒を解く。
「あっ……」
急に力が抜けたせいかふらつく。倒れそうになった時、身体を支えられて踏み留まる。
「大丈夫かしら?……やっぱり怪我してるの?」
「い、いや……大丈夫だ……」
蒼い瞳と目が合い、ドキッとしてまた目を逸らす。別に人と目を合わせることに慣れてない訳じゃないが、この目を見るとすごく緊張する。
「なら良いけれど」
僕が体勢を整えたのを確認して手を離し、また甲本を担ぐ。
「その、甲本は生きてるのか……?」
「息はしてる。まあ、無事かどうかは分からないわね。とりあえず面倒なのは変わらないし、この学校の教師にでも押し付けようかしら」
そう言って教室を出ようとする。
「ぼ、僕は……!?」
流石に襲撃された直後で一人で居られる程の度胸はない。必死に彼女を引き止める。
「………じゃあ、着いてきて」
「あ、ああ」
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