第15話
肩に回した右手で出現したソレを握る。
「な、なによそれ……!?」
真っ白に変わった頭髪と何も背負ってなかったはずの背中から出現した剣に甲本は驚愕する。
「何、って言われてもね?………そうね」
「貴女達の大好きなエレミュートの塊、としか言い様がないわ」
今しがた形成した奥の手、瘴気を放つ異様な"黒い剣"を甲本に向ける。
これこそが私が執拗にリッパーと呼ばれる所以。
「ふざけないでよ!エレミュートがそんな色してるわけないでしょ!?白よ!圧縮して高濃度にしても青にしかならないわよ!」
嘘ではない。空気中に溶け込んでいるエレミュートは基本白。ハウンドに使用されている高濃度エレミュートは青白い。
ただ、これは一切の不純物がなくなって真っ黒になってるだけ。
「はぁ……?ホント何なのよ、どうなってんのよ……!?」
「魔法じゃあるまいし……さっきのバリアみたいなのも訳わかんないし……」
「よそ見してて良いのかしら?」
「……っ!うっさい!」
その焦り、その苛立ちが命取り。エレミュートなんて"まだ最先端の科学者ですら完全には理解しきれていない謎の物質"だと知っているのに、撤退しなかった。
「どっちみちアンタは殺すっ!」
突き出された鋭い貫き手に合わせて剣を振り下ろす。
「え……?」
「さようなら」
剣に触れた瞬間ぱっくりと切り裂かれ、傷口からドロドロに溶け始め蒸発していく。
ソードデバイスのハウンドはエレミュートで形成した刃でフォリンクリの肉体を斬る。
何故通常の金属で切れないフォリンクリの肉体がエレミュートなら切れるのか?
それは、エレミュートこそがフォリンクリの身体を構成する主成分だからだ。
エレミュートはフォリンクリにとって動力、肉体の基礎であり"毒"でもある。人間にとっての酸素の様に。
「(まあ、ちょっと違うけど)」
いきなり大量に、それも純粋で高濃度のエレミュートを体内に入れられて体組織はボロボロ。
ズシンと背中から転倒し、のたうち回る。もう右手の殆どが溶けてなくなっている。
「うぎゃぁぁぁぁぁ!?ぅおァァァ!?ギュォッ、グルルアアアア!」
剣を消し、頭髪が元の黒髪に戻る。やっぱり黒い方が私は好きだ。
「おい!さっきの人!」
「ん?」
見上げると保護対象こと桐堂がこっちを見下ろしている。手には抜き身の刀が一振り。壁に突き刺さっていた小夜時雨を引っこ抜いてくれたらしい。
「(………あれは)」
そこである異変に気づくが彼の言葉でそれについては一旦後回しにする。
「そいつまだ生きてるぞ!」
「あら」
詰めが甘かったらしい。最後の悪あがきにこちらに突進をかけたようとしている真っ最中だった。
「っ……これを!」
小夜時雨をこちらに投げ渡す。結構重かった筈だけど、意外と根性あるのね。
「………ありがと」
礼を言って受け取り、斜めに切り払う。
「今度こそ、さよならね」
真っ二つに裂かれた甲本はそのまま地に伏す。
そして傷口から白い発光する粒子、エレミュートが溢れ出る。
それはフォリンクリの死を意味する。
「
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