第14話
真っ二つにされたライロー。それを信じられないと甲本が振り返る。その時だった。
「ブグェッ」
少女の跳び膝蹴りが甲本の顔面を正確に捉える。あまりの衝撃にヨタヨタと後退りしている。
「あら、いい面構えになったじゃない」
「がっ、てめぇ……!」
怒り任せに"ライローだったモノ"で反撃するも冷静さを失った甲本の攻撃は少女には届かない。
振り下ろす瞬間、柄を握る右手を蹴り上げる。
「なっ……!?」
驚愕する甲本の腹部に少女はすかさず蹴りを放つ。
その先は窓だ。
そのまま甲本は吹き飛ばされ窓から落下し、少女もソレを追いかけるように飛び降りる。
「あっ、おい!」
咄嗟に手を伸ばすが間に合わなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
落下しながら小夜時雨を甲本の心臓目掛けて突き下ろす。
「………チッ」
しかし、途中で突然現れた黒い手に腕を掴まれ、阻まれる。
「調子にのんな」
「っ………」
そのまま投げ飛ばされる。壁に張り付き、受け身を取った瞬間、その黒い拳が飛んでくる。
「(流石に校舎までは守れないわよ)」
飛び退き、その場から逃れる。案の定、外壁は呆気なく破壊される。
「チッ、避けんな………」
忌々しそうにこちらを睨む甲本。その背中からは巨大な黒い手が生えている。
「正体現しなさいよ、バケモノ」
「…………はっ、アンタも同類でしょ」
そう言って項垂れたと思えば背中がどんどん割れていき、そこから黒い"何か"が姿を現す。
そして甲本の身体は脱ぎ捨てられた服のように地面に転がる。
人型ではあるけど、亜人族じゃない。間違いなくコレはフォリンクリだ。
「あー、スッキリした。アンタも正体現したら?」
「失敬ね。私は人間。貴女みたいなゲテモノと一緒にしないで」
見たこともない姿だから暫定【甲本(擬)】と勝手に名付け、向き直る。そこである事に気づく。
「あ」
小夜時雨が壁に突き刺さている。投げ飛ばされた時に置いてきてしまったらしい。ついでに帽子も引っかかってる。
「(最悪……)」
長く伸びた頭髪が風に靡く。
エレミュート拡散力場発生装置はさっきあいつの口の中に突っ込んで爆発した。手元には残り5本の苦無しか無い。
「ぶっちゃけヤバそうだったけどアレがないならアタシの勝ったようなもんじゃん」
「(ホント、最悪ね)」
もう何も背負ってない肩に手を回す。こんな所で忌々しいあの力を使う事になるとは。
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