第13話



「へぇ、結構やるじゃん」


「そんならアタシも本気だそっかなぁ?」


 そう言って甲本はライローの取手の一つを勢いよく引く。


ブルルルルンッ


「(アレは……!)」


 エレミュートで形成された刃が出現し、チェーンソーのように高速回転する。

 最大出力、その威力は絶大。おそらく刀どころか校舎の強固な外壁すら溶断してしまうだろう。


「逃げるなら今のうちだけどぉー?」


 エンジン音の様な音が響き渡る。次の攻撃は間違いなく最も強力で最速の一撃が来る。しかし、それを目にしても少女は俺の前を一歩も引かない。


「あんた、危険だ……」

「………そう見たいね」

「イヒッ!」


 気づけば既に甲本は僕の方に接近していた。油断した、最初から甲本の狙いは僕から変わってなかった。


「(マズい……!)」


 ガァンッ


 しかし、突如僕を包む様に現れた黒いシャボン玉の様なものにライローは防がれる。


「はぁっ!?」


 流石の甲本も度肝を抜かれた様で呆気に取られている様子だ。


「貴女の相手は」

「ちょ、はぁ!?」


「私よ」


 少女はそう呟くと甲本に飛びつく。


「な、何よアンタ!ちょ、てめっ、離しなさいよ!」


 力任せに振り払おうとするが少女は器用に張り付いたまま、何かを手に持つ。そして


「召し上がれ」

「ムグゥッ!?」


 ソレを甲本の口に突っ込み、クルクルと華麗に飛び降りる。


 次の瞬間、甲本は突然の爆炎に消える。


「爆弾!?」

「こっち」

「うわっ!?」


 少女は着地するなり爆発した甲本には目もくれず僕の手を引き校舎に駆け出した。








「な、なぁ……君はいった……」


 教室に逃げ込み、息をつきながら質問する。

 命の恩人ではあるが、こっちの少女も何者か不明だ。しかし、言い切る前に指を口に当てられ、静止される。


「悪いけどその話は後」


 少女がそう言った直後だった。廊下側の壁が一閃され、吹き飛ぶ。


「鬼ごっこは勘弁してくんない?」


 甲本だ。

 あの爆発を受けて生きていた。それにさっきより明らかに怒気、殺気を感じる。


「あまりコレを人前で使いたく無いのだけど、ね」


 もう逃げられないと悟ったのか何なのか、ボソボソ呟きながら先程の刀にゆっくりと手をかける。


「ぶつくさ言ってんじゃないわよ!」


 甲本は最大出力、リミッター解除のライローを振り上げ、少女に向かって飛びかかる。しかし、少女はまだ抜かない。


「………」

「死ね」


 ライローが振り下ろされる。その瞬間


「貴女がね」


 抜刀。


 2人の少女が同時に交差する。


 そして、何か硬い物が床に落ちる。


 それは回転を促すサーキュラーユニットと、白色のボディ。真っ二つに切断、破壊されたライローだった。

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