第12話


「それは、どうかしら」


 もうダメだと諦めかけたその時、凛とした声が静かに響か渡る。


「がっ!?」

「ぐえっ!?」

「っ!?」

「何っ!?」


 同時に僕を囲んでいた集団がバタバタ倒れ出す。


「(これは……)」


 その倒れた人物達の胸元には例外なく黒いナイフの様な物が突き刺さっている。


「チッ!」


 そして、黒い影は刀を抜刀し、落下しながら甲本を斬りつけ、頬を掠める。


「アンタ、何者」

「…………」


 ギリギリで躱したものの余裕そうだった甲本の顔つきが明らかに警戒の色に変わる。


「怪我は無い?」

「あ、ああ……」

「良かった、間に合ったみたいね」


 突如現れた少女は優しく微笑む。目深に黒い帽子をかぶっていて、顔はよく見えない。

 しかし、背丈は僕よりも低く、声も高くてかなり若い印象だ。


「後ろに下がってなさい。私が守ってあげる」


 そう言って甲本の前に立ちはだかる。


「………へぇ、アンタそんなオシャレなだけの時代遅れな武器でアタシと勝負すんの?」


 しかし甲本もそれだけでは体勢を崩さない。そして目の前の少女を見て再び余裕が現れる。


 実体剣。フォリンクリに対して効果の薄い実体剣それは今ではほとんど使っているハンターは居ない。


 あの刀がどんな物か分からないが、ライローほどの破壊力は無いだろう。それに……


「「………」」


 今のナイフによる奇襲を免れた奴も数人残っている。勝算はかなり低い様に見える。しかし


「勿論」


 少女はそう言って一歩も動かない。それどころか少し笑っている。


「あっそ。じゃあ先に死ねば?」

「シャァッ!」

「シィッ!」


 甲本の一言と共に2人が飛びかかる。


「(速い!)」


 まるで瞬間移動、目で追えなかった。



 しかし、少女の反応はもっと速かった。


「遅い」


 1人は顔面に先程のナイフが2本突き刺され、もう1人は肩から腰にかけて斜めにバッサリ切り捨てられている。


 そして悲鳴を上げる間も与えず、2人の首は少女の右手の刀で刎ねられる。


 一瞬で、ほぼ同時に2人も葬ってしまった。

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