第11話
「そろそろか」
もうすぐチャイムがなる。誰もいないし帰宅の準備でもしていよう。そう思い教科書類を片付け始めた時だった。
バンッ
ドアが勢いよく開け放たれ、1人の女子生徒が入ってくる。
「あんた、桐堂よね?」
「…………甲本か」
右手には大型チェーンソーの様な形状のソードデバイス、【ライロー】が。まだチャイムは鳴っていないが、ハウンドを持っているという事は申請書を出したのだろう。
「授業は終わったのか?」
「そそ、早めにねー。それで桐堂にちょっと用事があってさー、チョー特急で戻って来たわけ」
そう言ってニタニタ笑いながら近づいてくる。明らかに様子が変だ。椅子を少し下げ、真下に備える。
「というわけでさー」
ゆっくりと振り上げられるライロー。次の光景が目に浮かび戦慄する。
「死んでくんない?」
「クソッ……!」
危なかった。あと少し、ほんの一瞬反応が遅れていたら僕自身もあの机と同じ様に真っ二つになっていた。
「待ちなさいよぉ!アッハハハハ!」
「待つ訳ないだろう!?」
ライロー。現在甲本が片手でぶん回しているチェーンソーの様な大剣タイプのハウンド。
エレミュートで構成された刃が高速回転して敵を斬り裂く武器だが本体にも多少の切れ味と重量があり、人間くらい普通に殺傷できる。
「意外と逃げ足が早いのねっ!………ターゲットはそっちに行ったわ。援護して」
「っ!」
側の部屋から妙な人物が現れる。右手には拳銃、僕を狙っている。
「死ね」
「くっ……!」
咄嗟に胸ポケットのボールペンを投げつけ、気を引いた隙に窓から飛び降りる。
交戦は避けるべきだ。
エレミュートに適応した人類は稀に不思議な現象を引き起こす。人々はそれを一般的に【能力者】と呼ぶ。
恐らく甲本は身体強化系の能力者。じゃなければあの重量を持つライローを軽々と振り回せる訳がない。絶対に戦っちゃいけない。
「そぉーれガラ空きぃ!」
「がはっ!」
その時、背中に蹴りをくらい、そのまま外に投げ出される。そして、体勢を崩し、不時着する。
「ぐっ、ごはっ……」
強い衝撃を受け、身体が動かない。息もうまく出来ない。
「やっと動かなくなった。アンタ達、罠の可能性もあるからしっかりと見張っておきなさいよ」
「OKシスター」
後から降りて来た甲本と数人の人物が動かないでいる僕を囲む。
「さーてと、年貢の納め時って奴?」
再び振り上げられるライロー。次は、避けられない。
「だれ、か……!」
「だれも来ないわよっ!」
「っ………!」
僕の助けを求める声も虚しく、ライローが振り下ろされる。
もうダメだ。そう目を閉じ諦めそうになった時だった。
「それは、どうかしら」
凛とした声が、確かに僕の耳に聞こえた。
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