第9話


「………?」


 何やら後ろから視線を感じる。振り返るが、僕に視線を向ける人は誰一人居ない。


「どしたの、廻影くん」

「ああ、いや。何でもない」

「…………」


 気のせいだろうか。もう一度後ろを見るが特に変わった様子は無い。まあ、今は気にしないでおこう。


「そういえば今日だったわよね?」

「ん?何がだ?」


 道尾が落ち着き、やっと昼食を取っていると烏川がそういえばとカフェオレを飲むのを中断して話を切り出す。


「ハウンドでございます、桐堂様」

「ああ、そういえば」


 確か昨日配られた申請書にサインして持って行くんだった。

 ハウンドはフォリンクリを倒すために作られた武器の総称で、さまざまなタイプがある。

 大きく分けるとエレミュートで形成された刃で敵を斬る近接戦闘用のソードデバイス、圧縮したエレミュートのビームで敵を撃つガナーデバイスの2つに分けられる。


「ちなみにわたくしは、コレでございます」

「えっ!?何それ!?」


 燕翔寺が懐から取り出したのは扇子だった。だが、どこかおかしい。


烈扇レッセン、か?」

「はいっ!その通りでございます、桐堂様」


 燕翔寺の実家、飛燕グループの新ハウンド。分類はソードデバイスだが、使用者によってはガナーデバイスとしても機能するらしい。まだ試作段階だと聞いていたが……


「(いや、そうだったな)」


 燕翔寺家の令嬢なら、その試作品を持っていて不思議では無い。むしろデータを取るのに持ってこいだ。


「いいなぁー、個人所有のハウンドなんて〜」


 道尾の言う通り、ハウンドは基本的にどのメーカーも高価な物だ。学生のほとんどはここで貸し出されたものをプロになるまでの間、使い続ける。


「良いな良いなー!」

「静かにして、ミチオ」

「ミチオ言うなー!」


 再び暴れ出そうとする道尾を抑えるため、燕翔寺が話を変えようとしてハッとする。


「烏川様は……って、そうでございました」

「私?」

「わたくし共、ハンター科ではなく普通科でした……失礼しました……」

「別にいいわ。気にしないで」


 しかし、そこで烏川の席、側の壁に立てかけられた布に包まれた棒状の物が目に入る。見るからに妙なモノだ。

 名簿にも「普通科」と記されていたが


「(本当に普通科なのか?)」

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