第8話
昼休み、何やかんやあってお互いまだ友人の居ない燕翔寺と昼食を食べようと思った時、クラスメイトの1人が輪に入って来る。
「一緒良いかなっ」
「あ、ああ……」
男子なら話が合うかもしれないと思ったが、生憎とそのクラスメイトは女子。それも結構明るいタイプだ。
「知ってると思うけど改めて。【
「あっ、ああ。宜しく」
今まで接したことのないタイプの相手で、変な反応をしてしまう。
「うっひひ、緊張してやんのー!」
これは長くは保ちそうにない。燕翔寺に視線で助けを求めるもよく伝わっていないらしく首を傾げる。可愛いが、少しポンコツだ。
「そうだ!」
どうしようかと思ったその時、道尾は何か思いついたと手を叩いて一度僕の席を離れる。向かった先は隣の烏川の席だ。
「暁海ちゃんも一緒どう?」
「………」
読書を止め、僕と燕翔寺を交互に見て口を開く。
「そっちは?」
「わたくしは是非」
「ぼ、僕も問題無い」
「そ」
そう小さく呟くと、本を置いて椅子を動かし始める。
「じゃあご一緒しようかしら」
「これから宜しくっ!」
「ええ、宜しく。ミチオ」
突然、道尾がガクガクと震え出す。
「い、今……暁海ちゃん、ミチオって言った!?」
「……?貴女、ミチオでしょ?」
「苗字で呼ぶのやめてよー!なんかオッサンみたいじゃん!」
「ミチオ……….ぷふっ」
復唱してみて思わず吹き飛す。確かに、"みちお"という名前の男性はよく居る。
「今笑ったよね!?もー!廻影君までー!」
ワーキャー叫びながら暴れ出す。なんとか諌めようとするが、烏川は面倒臭そうにカフェオレを飲み始めるし、いきなり下の名前で呼ぶのも気が引ける。ここは燕翔寺に……
「燕翔寺……」
「わたくしの出番でございますね、分かりました」
今度は上手く伝わった様だ。
「皆様、お互い、下の名前で呼びあうのはどうでしょうか?」
「っ!」
燕翔寺の提案に目を輝かせる。
「智恵ちゃん……!」
「はい」
「ありがとーっ!」
「わわっ!?わっ、わひっ!?」
燕翔寺にミチオが抱きつく。急な出来事で燕翔寺は既にパニックになっている。
「わ、わっ、み、道尾様っ、お、落ち着いて……ひゃんっ!?」
「茜音って呼んでぇぇぇっ!」
よく分からない叫び声を上げながら燕翔寺をさらに抱きしめる。抱きしめられた燕翔寺はさらにパニックに陥り、逆に烏川は知らん顔で1人食事をする。
「(なんか、凄いな。女子って)」
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