第42話 土産

あの晩 先の黒の王・金の瞳をした竜の王 私を抱いた王は言った


夢うつつの中で聞いた・・あの言葉・・


「そなたの実の子供・・エイル、エルトニアはとても面白い運命をたどる

息子のアーシュランと深く結ばれる運命とは・・な・・。」


とうの昔にエリンシアに触れて、

エリンシアの過去を そしてエイル、エルトニアの未来を

過去見の力と先読みの力を持った あの方は そう言った


「ああ、エイルとアルテイシアはとても仲が良いそうよ


エイルがアルテイシアの為に 

リュートを弾いてあげたり アルテイシアはよく黒の王宮を訪ねたり

少し前に 自分の湖畔にある城にエイルやリアンを招いて宴をしたそうよ


アルテイシアは アーシュラン兄様の事は諦めてないらしくて

第二王妃の座を狙ってるみたい・・との噂話を聞いたわ」

首をすくめるアムネジア


「そちらの絵は 今のアーシュラン兄様とエイル・エルトニアにアルテイシアよ」


三人の人物の絵


若い男性が左側に立っていて 真ん中に置かれたソフアに二人のまだ17,8歳の娘が

二人仲良く座っている


長いウエーブのかかった金の髪と・・

ストレートの長い耳元の辺りで左右の横の髪を少し切っている黒髪の少女


金の髪の少女は長いウエーブのかかった髪をポニーテールにしている

大きな瞳の・・青と金に近い茶色のオッドアイの美しい少女

白を基調とした 裾の短い服を着ている・・胸元には 大きな金の飾り

裾には 金ラインの裾飾り


これがエイル・・エルトニアなのね・・涙ぐむエリンシア


長い黒髪の少女は あのアルテイア姫


アーモンド型の大きく少し吊り上がった瞳

淡い緑色の刺繍の入った 裾の短い服

大きめの胸元には少し開いて見えて 金のエメラルドの宝石の入ったネックレス


左の人物 黒髪の青年 吊り上がった瞳

精悍な顔立ち・・


あの不思議な焔の瞳・・王女テインタルと同じもの


黒髪は肩より少し長い髪を紐で縛っている 金の輪を 頭に被り

金の縁取りをされた黒い服を身につけ

 

肩に深紅のローブを斜めにかけて

 その深紅のローブに細長い金模様のライン状のものがついている


腰には 同じく深紅の布で ベルト代わりに縛ってる


彼女二人を守るようにソフアの傍近くに立っている


三人とも・・

いや四人ともそれぞれ 幼い頃の面影がある


黒の王・火竜王(サラマンデイア)となったアーシュランとは 


ほんの少し会っただけだが 

白の国に向かう馬に乗った 寂しげな後ろ姿 


印象的なテインタル王女と同じ不思議な美しい焔色の瞳

忘れられない


我が子 エイル・・エルトニア


なんて 愛らしく美しくなって・・

本当に 黒の王の花嫁になるのだろうか?


語学は苦手だったが 今は黒の国の言葉はマスターしたのだろうか?

お料理や裁縫も かなり問題だらけだったが


楽器の演奏は 私が教えてあげて 竪琴やリュートは上手だった


リアン様 可哀そうに片腕を無くしたとは・・

あの頃のまま 大きく立派な青年になった


しかし 武官になったとは・・


確かに剣の腕も 魔法も上手だった

幻獣を従わせる呪歌は 幼い頃から 素晴らしかった


しかし、もう片腕では演奏は出来ない


あの女騎士でケンタウロスのレグルスはどうしているだろう?

彼を守って 今は黒の王宮にいるのだろか?


アルテイシア姫


活発で 勝気そうで 優しい一面を持つ 綺麗な姫・・ますます美しくなった

水や風の魔法も剣の腕も良いとリュース公は褒めていた。


リュース公はどうしてるだろう? 

全ての事情を知った上で 

黒の王の子を身ごもった私を花嫁に迎えると言ってくれたあの人は?


エリンシアは二枚の小さな絵を胸元で抱きしめる


そして ドアをノックする音・・


エリンシアの幼い子供

「母様!」 胸元に飛び込んできた


その子を代わる代わる エリンシアとアーサーは抱きしめる


その様子を嬉しそうに見るアムネジア・・



その後の事・・巨人族の王は エリンシアを手放したくはなく

月のうち 十日間は 王宮に滞在するようにと命令された・・。


十日間・・また王の玩具になる

でも残りの日々はアーサーや子供と過ごせる


辛い気持ちはあるものの


その夜 アーサーの屋敷に帰宅して 皆で食事を楽しむ

アムネジア・・テインタル王女は 白の国と黒の国の食材も持参していた


その食材で 沢山の料理が作られ それぞれ食事を楽しむ


会話が続く

もちろん喉を潰されているエリンシアは喋れないが

ニコニコと笑っている


食事の後は 羽琴の演奏するエリンシア


次には アムネジアがリュートを演奏した

見事な腕前だった


拍手するエリンシアとアーサーと幼いエリンシアの子



アムネジアは その夜は 屋敷に泊まっていって 

昼頃 名残惜しげに 去っていった。


しばらく後に またエリンシアは懐妊した

その子は 無事に産まれる


そして 上の子と同じく 父親は王なのかアーサーの子なのか分からない


それでもアーサーは その子も愛してくてた

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