第14話 ハッピーエンド&バッドエンド

「奥様、お知らせしたいニュースがあるのですよ」

病院に帰ると婦長が話しかけてきた。

「柊子さん 再婚なさったそうです!」

瑞穂は目を見開いた。


「あんな感じで病院を辞めて私たちもずっと気にかかった居たんですが、あのスナック時代からご贔屓の男性とご結婚されたそうです。」

「そうなの。」


「あの方は町工場の社長さんで前妻を病気で亡くされていらっしゃって、スナック時代は柊子さんの手料理が食べたくて毎日通ってきていたそうです。病院勤めになってもいろいろ差し入れを持ってきてくださり、ずっと柊子さんファンだったそうで(笑)結婚の申し込みしたかったようですが、お子さん方の手前出来なかったんですって。

ところがある日そのお子さんが2人揃ってが柊子さんをたずねていらして

『親父を幸せにしてやってください』って言ったんですって!

ずっと一人で頑張っている親父を寂しそうだなと思っていたけれど、柊子さんとが現れて明るくなった。ずっと柊子さんを見て来て、この人なら、お袋も喜んでくれると思うって、そう言われたそうです。


身内だけで先日結婚式も上げて、柊子さんもご主人もずーっと泣いていらっしゃたそうです。柊子さん今はとっても幸せだそう。私も肩の荷が下りましたよ」

瑞穂は取り繕う言葉も出て来なかった。


後ろから呼ぶ声があった。

「婦長、お願いします」

「今すぐ行きます!それでは、奥様失礼します」


救急搬送の車が裏口に到着すると、にわかに北病院は騒がしくなった。

瑞穂はとてつもなく惨めな気持ちでその場に立ちすくんでいた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る