第10話 新たな出会い


「すみません、控室はどこを使ったらいいでしょうか」

柊子が病院の掃除をしていると、尋ねた人がいた。病院には毎月一度ボランテイアで、音楽会が開かれている。その会でフルートを吹いていた木崎琉人だった。

「こちらです」

案内しながら柊子は言った。

「ニューシネマパラダイス素敵でした。愛のテーマに入る前の郷愁のテーマから入る所がとてもグッときましたよ」

「わあ、嬉しいなあ。よく聞いてくれてたんですね」

「エンニオモリコーネ大好きなので。入院中の皆さんがとても楽しみにしています」

「僕もモリコーネ大好きなんです。聞いてくれている人がいると思うと頑張りがいがあります。」

木崎はほほ笑んだ。吸い込まれるような優しい笑顔に柊子は好感を持った。


音大出の柊子は琉人と話が合い、瞬く間に親しくなった。木崎は才能豊かなフルーテイストでプロダクションに属しているが、月一回ボランテイアで休日に病院や施設で演奏して回っていると言うことだった。


その噂はすぐに瑞穂にも入ってきた。山下を亡くして3年たらずで柊子に新しい交際相手が出来るのは我慢のならないことだった。



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