第9話「初代女将の秘密」

その日あやみと友里恵は、夕食を食べて温泉に入り、布団の中で沢山のお喋りをした。


あやみは寝る前にテープレコーダーに「これから癒やしの森に行ってきます」と録音した。


あやみはそれから、

「携帯。ノート。筆箱。テープレコーダー。」を取材用のバックに入れて用意をした。

そして、友里恵に言った。


「もし、お母さんに何かあったら~。

お爺ちゃんお婆ちゃんにすぐ電話するのよ。

お母さん、もしかしたら「癒やしの森に」行ってしまうかも知れないから。ごめんね。」


「お母さん嫌。行かないで。」そう言って二人で泣いた。

「大丈夫だよ。たぶんただの噂だよ。」

あやみはそう言って友里恵を落ち着かせた。


二人が眠りについた頃。

深夜2時、廊下から足音が

聞こえた。あやみは目を覚ますと、自分の部屋が霧に包まれているのに気がついた。そして霧の中から

チリン、チリンと音が聞こえてきた。


あやみは、


「誰?」と尋ねた。

あやみは、急に眠くなり身体の自由が利かなくなっていた。


友里恵があやみの異変に気づいて目を覚ました。


「どこに行くの?お母さん❗」


そう言ってあやみの腕を掴んだ。


あやみは、凄い力で友里恵を突き飛ばした。


そして信じられない事を友里恵に言った。


「私の邪魔するな❗」その声はいつものあやみの声ではなかった。「行かないで」そう言って泣きながら腕を掴む友里恵の手を振りほどいた。


「うるさい❗」


そう怒鳴るあやみは、いつものお母さんに友里恵には見えなかった。


霧の中に見たあやみの前には笑っている初代女将の「国見くに」の姿がうっすらと見えた。


そして、友里恵の目の前であやみと「国見くに」は

霧の中に消えて行った。


その後、霧が消えて二人の姿は完全になかった。


次の朝、友里恵は「やっぱり夢じゃなかったんだ。

お母さんを探さないと。

でも、見つかるはずないし、とりあえず女将さんに話さないと、

友里恵は深夜あった出来事を話した。


女将さんは直ぐに自宅に電話を掛けてくれた。

警察にも電話をかけたが、

「また?「癒やしの森事件?」

そう言ってとりあってはくれなかった。


友里恵はお爺ちゃんお婆ちゃんに迎えに来てもらい。自宅に帰って行った。


友里恵達の部屋には、友里恵の取材バックが残されたままになっていた。


テープレコーダーには昨日録音した

「これから「癒やしの森」に行って来ます。

そう記録されていた。」


友里恵とお爺ちゃんお婆ちゃんはその取材バックを

あやみの会社に渡し、事情を編集長に話した。


会社でも、中村さんだけではなく吉田さんまで

そう言ってこの取材は辞めて、探偵を雇って二人を探す事を約束してくれた。


一方あやみは「癒やしの森」にいた。

そこには初代の女将の「国見くに」がいた。


「貴方は疲れている。元気がでるように、

この食事をたくさんお食べ。そして温かい温泉を入って、ゆっくり身体を癒してくださいな。

そう女将はあやみに言った。


「早く返して❗友里恵のところに返して❗

ご飯なんかいらないから❗あれ?取材バックがない⁉️携帯も」そう言うと「ここは、「癒やしの森」ここには携帯も仕事道具も必要にない。


疲れている人だけが癒しに来る場所ですよ。

だから

何もいらない。ゆっくり休んでくださいな。

温泉にでも入って。友里恵ちゃんなら大丈夫、

お爺さんお婆さんと一緒に自宅に帰って行ってもらったのでな。

取材バックもあやみさんの会社に持って行って編集長に、渡してあるのでな。


「なんで❗何で勝ってな事を❗友里恵に会いたい早く帰して❗」

すると、初代女将は言った。

「あなたにそんないう権利はあるのかしら❗

貴方は友里恵ちゃんが久しぶりのお母さんとの旅行だと楽しみにしていたのに貴方はいつも、

携帯ばかり、取材ばかりじゃないか❗自分の親に子供を任せてばかり、

友里恵ちゃんの事をみていなかった、


そんな親は親なんかじゃない❗

貴方が本当に子供の事を思っているのなら、

帰りたい気持ちがあれば家に帰る事ができる。

でも、家族を忘れた時あなたは、

家に戻れなくなるのよ。


私はね❗貴方のように子供の事を考えない親が許せないの。

だから、ゆっくり身体を休めて、

もう一度家族の事を考えてほしいの。」


さらに、女将は話しを続けた。


「私が旅館を造った時、お客様の心も身体も安らげる旅館を造ろうと思っていたの。

今の大浴場の反対側の廊下の突き当りの白い壁

私は壁になって潰される前、階段を下に降りると

貸し切り風呂があったの。

私がお客様に喜んでほしくて緑の葉っぱをたくさん置いてその貸し切り風呂に名前をつけたわ

「癒やしの森」ってね。


その貸し切り風呂は

とても、地元では有名になって、家族連れがよく訪れたわ。ところが月日が流れて、お客様の質が変わってきたの。


子供を放って、仕事をする親、子供を一人でお風呂に入れたり、ご飯を一人で食べさせたり、私はね事故にならないように子供達の様子を見ながら、

ご両親に注意をしていた。


そんなある日


まだ小さい子供を一人でこの「癒やしの森」に行かせて、自分は後から行くと行って部屋で仕事をしていたの。


私がそれを見て「お子さんが危ないので」

そう注意をした。

それなのに仕事に熱中したあまりに、

この「癒やしの森」で、その子は浮いて亡くなってなっていたのよ。


そればかりか何も反省しないその親は裁判を起こした。逆に私達がお金を支払わなくてはならなくなった。そう、裁判に負けてしまったの。


その親は、そのお金で会社を立ち上げたわ。

子供の事なんか何も考えていない。


引き継いだ女将は直ぐにこの貸し切り風呂の階段を壁で埋めて「癒やしの森貸切風呂」を無かったようにしたの。


ここ最近そんな親が増えてね。

だから私はね、家族の事を考えているか?いないかを?ここで確かめる事にしたのよ。


身体をしっかり癒して


それから、帰りたいと願わなければ、ここからは、二度と出られないわ。1ヶ月過ぎたら出られなくなるわよ。」


女将はそう言うと霧の中に消えて行った。


ここからあやみは「癒やしの森」の秘密を知ることになる。

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