第10話
商人と別れ、図書館に案内される。道中で役人からホンタ王国は本が有名と聞いた。昔、この国の王族が漂流者から印刷や製本の技術を教わったらしい。それに伴って、コメタ王立図書館はこの世界で一番の蔵書数なのだと誇っていた。
世界一の蔵書数と聞いて、一体どれだけの本があるのか? その中にもとの世界に戻れるヒントはあるのか? たくさんの疑問が湧いてくる。
「着きましたよ。王立図書館です」
役人が自慢げに紹介する施設。これが世界一の蔵書数の図書館かと驚いた。だって、平屋だったからだ。
もしかしたら、この世界では本の数がとても少ないのかもしれない。だから、平屋に収まるだけの本があるこの国は、説明通りに世界一なのだと推測した。
「おぉ、立派な平屋ですね。とても和風です」
とりあえず、わぁすごい的なリアクションをしなければと思ったけど、失敗したかなぁ。役人が期待していた反応と違うぞって顔してるから失敗してるなぁ。
「ねぇねぇ、あきちゃん。この平屋の下の方からものすごい魔力を感じるよ。たぶんだけど、地下に魔法の本があるんだよ」
よっちゃんが魔女っぽいことを言っている。大魔女だった。
「さすが、大魔女様。確かに、この図書館には魔法の本も揃えております」
役人が嬉しそうに語る。そんなことまで話していいのかね?
コメタの時から感じていたが、この世界の人たちは基本善人だ。曖昧な国境に関してもそうだ。うーん。
「では、どうぞお入りください」
役人に呼ばれたので、よっちゃんと共に平屋の中に入る。
「うわぁ、すごい。もしかして、この都市の地下まるごとが図書館なのかな?」
今度は本当に驚いた。地下図書館は縦にも横にも広かった。
自分の驚いた顔に、役人も嬉しそうだ。
「流石にそこまでは広くないらしいけどな」
今まで案内していた役人とは違う声だ。この声の主は。
「久しぶりだな。田中に吉田。元気だったか?」
佐川君だった。
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