第5話

 姫の準備ができたらしく、自分とよっちゃんは応接室でいいのかなぁ? とにかく広い部屋に案内された。

 和室に騎士団やセバスチャン的なたちがいるのは違和感しかなかった。そして、もちろん姫もヒラヒラのドレスを着ていた。違和感。

「私様がこの国の姫の一人、コメタ・サンジョですの。よろしくお願いしますね、地球の方たち」

 12歳ぐらいだろうか? 自分より幼い金髪のお姫様の挨拶だった。

「田中秋子です。よろしくお願いします」

 今回は学級委員長は自重した。姫に張り合える役職ではない。

「同じく、吉田好美です。よろしくお願いします!」

 なにが同じくなのかはわからないが、よっちゃんが元気よく自分に続いた。

 そして、「座ってお話しましょうか」と姫が言うとさっと座布団が用意された。

「田中さんに吉田さんですのね。私様のことは気軽にサンジョさんとお呼びください」

「あの、サンジョさんってもしかしてお姉さんが二人いますか?」

 疑問だったことをよっちゃんが聞いてくれる。

「ええ。姉が二人いますわね。あと、兄も一人。お二人にも紹介できればよかったのですが、今回は私様の初仕事。なので、私様だけで田中さんと吉田さんとお話がしたかったですの」

「初仕事?」

「はい。異世界交流ですの。この国、いえ、この世界は時折訪れる地球からの漂流者の力を借りて発展してきました。お二人には地球の技術や文化、思想に政治。その他諸々を教えてほしいですの」

「いいですけど、私たちにもこの世界のこと、教えていただけないでしょうか?」

 情報は大事。言葉は問題なさそうだけど、自分たちはこの世界のことを知らなければならない。

 一つは、時空の歪み。地球からこの世界への一方通行なのか。帰る手段はないのか調べたい。

 そして、もう一つ。魔法について。この世界では魔法が使えるらしい。ドラゴンがいたのだから、魔物とかもいそうだ。そんな危険生物に遭遇したときに身を守る術がないのはよろしくない。あと、せっかくなので使ってみたいなぁと思ったからだ。

「もちろんですの。だって、交流ですのよ。与えてもらうだけでは私様の名が廃ります」

 こうして、サンジョさんとの異世界交流が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る