第3話

 騎士団のリーダー的な人が回収部隊の馬車が来るまで話がしたいと言ってきた。ほかの団員は自分と一緒にやってきた漂流物の回収をしている。

「我々は、コメタ王国の騎士団です。私は部隊長のマグロウ・ホッカイと申します」

 騎士団は回収部隊も兼ねています、とのことだった。

「私は田中。田中秋子です。学級委員長です」

 名前だけではなく、部隊長に対抗して役職も言ってみた。

 そして、せっかくなので質問してみた。

「どうして地球のことを知っているんですか?」

「数年に一度、大きな時空の歪みが発生するのです。そのとき、地球の方や物がこちらの世界に流れ着くことがあります。我々は漂流者や漂流物から様々な知識得て、文明を発展させてきました」

 なるほど、先人がいたから地球のことを知っているのか。そして、言葉の壁もないというわけだ。ありがとう、先人たち。

「先人がいたと聞いて安心しました。ところで、今回の時空の歪みで流れ着いたのは私だけでしょうか?」

 机や黒板もあるし、クラスメイトも巻き込まれている可能性が高い。

「今回の時空の歪みは大きなものでした。おそらく、この世界の各地に漂流者や漂流物が流れ着いていると思われます。しかし、我が国で漂着が観測されたのは、このスンスキ草原と、リンゴン樹海の2か所です。リンゴン樹海にも我々のような回収部隊が派遣されています」

 入口は一か所でも出口は複数ということだろうか。なんて不親切なんだ。とりあえず、近くにも出口があったらしいのでそちらに期待する。この場合、自分以外にも巻き込まれていることを期待してしまっていいのだろうか。

 そんなことを考えていると、馬車がやって来た。


 馬に乗るのは怖いので、漂着物が詰め込まれた荷台に乗り込む。

 いよいよ、城に向けて出発だ。これでなんとかなる……のかなぁ。

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