第6話 あとがきと言う名の蛇足

 前回執筆した『空想科学』では、私のイメージカラー灰色に対して、作曲家と絵師の両氏は青だと言っていた。

私の音楽に関する感性の乏しさを前回のあとがきに書き殴ったものだが、今回の歌のイメージは夜と決めて書いていた。


 昨日作曲家から連絡が来て、執筆も終盤に差し掛かるというタイミングで、

「イメージは夜だから」

 という仮に私のイメージが朝だったらどうするんだという噴飯ものの発言を残していった。

 

 だが、まぁ良い。作曲家のイメージも夜、私のイメージも夜。そこに何の問題もない。

それどころか、僅か数週間を待たずして作曲家の感性の領域に足を踏み入れた事になる。


 恐るべき天賦の才である――と自画自賛するのは些か早計であろう。


 この歌は始終踊りまくっているが、早朝から踊り明かすなど一般的には狂気の沙汰で、ドラッグでもキメているのかと余計な心配さえしそうになる。

そもそも、歌詞の中に前述した踊り明かすとか、ダイレクトに今夜とか出てきているので、誰がどうイメージしたって夜に帰結するのは自明の理であった。

くそう、ぬか喜びさせおってからに。


 さて、そんな尺稼ぎと邪推されかねない前置きはさておき、今回の『二人の舞踏会』作成にあたって、私は大いに悩んだ。

と言うのもURLを辿って一度曲を聴いて欲しいのだが、この曲のハイライトはどう曲解したところで踊るしか無いのである。


 困った。だって私、踊りとか全然解らないし(そんな事言ったら、音楽だって全然解らないのだが)

知らない事を書くというのは苦痛である、と言うより、私のショボい技量では不可能である。


 そんな私の心配をよそに、歌詞の中の登場人物は踊り狂っているのだから、いっそ舞踏会に乱入して即興のパラパラでも踊ってぶち壊したろうかという邪念が起こる。


 ともあれ、歌詞の踊る部分だけを抽出し、残りをすべからくオミットしたところで『二人の舞踏会』の大まかな構想は作成出来た。後は面白いか、面白くないか、それだけである。

無論その判断は読んで頂いた読者に委ねるとして、折角あとがきにまで付き合って貰っているのだから、もう少し本編の蛇足を綴っていこう。


 今回の執筆の際に、私は「」を使った会話を禁止する縛りを設けた。

「」を用いた会話を乱用すると話が軽くなってしまい、歌のイメージにある夜=ダークさにそぐわないかと危惧して、挑戦した次第である……おぉ、嘘も方便だが小説家っぽい言い訳だ。

本当はどうなの?

何のために?


 私にも解りません。


 魔が差したのだろうか。そうかもしれぬ。

だがコンセプトなど私はいつも適当に決めてしまう性質なので、いくら無い知恵絞ったところで下手の考え休むに似たりであろう。


 また、少女を主観として物語を展開するのも初めての試みであった。少女の心を理解する為に少女漫画でも通読すればよかったのだろうが、あいにくそんな時間的余裕はない。

イメージを具現化しろ!と言う訳で、私の半生における少女像という、既に輪郭がぼやけつつある主人公が誕生した。

短編でなかったら、私の首をチョークスリーパーの如くギリギリ絞め続けた事であろう。くわばらくわばら、考えるだけでも恐るべきである。


 青年の方は、イメージが湧きやすかった。少女が闊達な強い人間だったので、対照的に社会の不安に対してもろに影響を受ける弱者、その対比を楽しむ人物として登場させた……のだが、気付けば毒気の抜けた人物に成り下がっていた。残念。


 想像と違うところに着地する、そんな失敗も楽しからずや!と私自身のプロットの甘さを棚上げしたところで、今回のところは一先ず、書き終えた事そのものに一人安堵して筆を置くとしよう。

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2人の舞踏会 @kinnikusizyosyugi29

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