第32話「食べて!」

「よおし、海鮮BBQのはじまりだぁ! どんどん焼くぜぇ! 魚をドン! 野菜をドン! 海老をドン! イカもドン!」

 声はマリネ先輩。焼くのは全部ポワレさんがやります。

「とっても美味しそうです!」

「ロティちゃん元気になってきたなぁ」

「はいっ、なんかお魚を食べたら元気が戻ってきましたっ!」

「よしっ、じゃあロティも焼いてみるか?」

「えっ、いいんですか?」

 ポワレさんは笑顔で頷いてから、手招きします。

「これを、こう」

「はい……」

 ジュウジュウと焼ける海鮮の香ばしい匂いが漂ってきます。

 三人は一生懸命に焼きを見守るロティさんを見守っていました。

「……なんでしょうか?」

「いや、気にするなロティ。続けたまえ」

「はい」

 じーーーーーーっ

「あの……」

 じーーーーーーっ

「皆さんも焼きますか?」

 三人はハイタッチしています。

 ロティさんはわけが分からず首を傾けます。

「ロティ君の呪いの仕組みがようやく分かった」

「えっ!? 仕組み、ですか?」

「どうやらロティちゃんは腹ぺこすぎると呪いが発動するらしいわ」

「腹ぺこになると……なるほど、思えば確かにすごくお腹が空いているときは記憶があまりないかもしれません」

「だから腹ぺこロティになる前に、まず口に何か入れておけば呪いは発動せずに済むかもしれない」

「腹ぺこロティ!?」

「腹ぺこロティ。かわいい」

「そうですか? あ、皆さん、焼けました。食べましょう」


 ☆


「ほんじゃシメはうちが海鮮焼きそば作るからなぁ」

 ジュレさんはやる気まんまんといった感じです。

「ジュレの焼きそば結構美味いからなぁ」

「まぁ簡単やから誰でも出来るけどなぁ」

「楽しみですっ!」

「ひゃっほーい! 焼きそば! 焼きそば!」

 アンチョビ先生の周りにはお酒の瓶や缶で溢れています。


「まずごま油で麺の表面をパリッとさせるなぁ。その横で海鮮と適当に切ってある野菜を炒めるでぇ」

 へらを器用に使って職人さんのようなジュレ先輩。

「ほんで具材と麺を合流させまあす。それからあとは調味料なぁ。オイスターソースと醤油、酒とみりん」

「あの、オイスターソースってなんですか?」

 ロティさんはこれまた不思議そうに首を傾げました。

「よおく聞いてくれたロティ君。オイスターソースとは何なのか、教えてあげよう。言ってやれポワレ君!」

「牡蠣油」

「えっ、柿? あの果物の」

「牡蠣油。海の牡蠣の旨味エキス」

「海の牡蠣……あのよく食べたらお腹壊すと言われている幻の食材の。お父さんがよく食べたいと言っていましたが」

「幻ではないけどなぁ。まぁオイスターソースはコクと旨味がすごい万能薬みたいなもんやからよく隠し味とかにも使われんねん」

「なるほど……隠し味ですか。プロみたいでかっこいいですっ!」

「じゃあ最後は塩とコショウで味を調整したら完成。な、簡単やろ?」

「いい匂い」

「はいっ、これなら家のフライパンでも出来そうですっ!」

 ジュレさんは紙皿に海鮮焼きそばをわけていきます。

「お好みで檸檬とか海苔とかまぶしてなぁ、うちは絶対紅ショウガ派やねんけどなぁ」

「なんと紅ショウガ! ジュレ先輩は上級者ですっ!」

「いただきまあす。ずるずる……うっつめぇ!」

 マリネ先輩はさっそく食べています。

「遠野さあん。しぇんせいのぶんはしぇんせいのぶんは?」

 アンチョビ先生は子供のように足をバタバタさせます。

「はいはい。ほんまこの人は……」

「わぁ……おいしそうねぇ。いただきまあしゅ。ずるずる……うっみゃあああい!」

 ロティさんとポワレさんも仲良く食べています。何故か子猫さんが隣にいます。

 ジュレ先輩も満足そうにしています。

 こうして楽しい旅の一日は幕を閉じます。






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腹ぺこロティ! meimei @ayataka_sanpo

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